最初に当事業所の3つの事業を紹介します。
1.訪問看護事業です。看護師6人、保健師1人、作業療法士1人で月約75人の方に訪問してい
ます。
2.訪問介護事業はホームヘルパー14人で月に約65人の方に訪問しています。
3.居宅介護支援事業です。ケアマネジャー専任1人、看護職員との兼務が5人で約80人のケアプ
ランを担当しています。このような中で認知症の方との出会いがあります。
今まで出会った中から在宅での認知症ケアの実際を、ご家族の了解を得て紹介します。事例の年齢はすべて70歳以上です。
事例1 異食行為と便秘との関連
本来食べ物でないものを食べてしまうという症状があった対応です。
女性で介護保険での要介護度は4、かろうじてトイレに行ったりしますが、ほとんどベッド上ですごしている方でした。診断名は慢性関節リウマチで、認知症の診断名はありませんでした。病弱の御主人と二人暮しで、毎日型のヘルパー、月2回の訪問看護を利用していました。ヘルパーが訪問しているときにトイレでぺ一パーをちぎって食べたり、便を手に取っている場面がありました。
対応としては異食行為だけに注目したわけではなく、ケアマネジャーと兼務している看護師が状態を観察する中で排便のコントロールがついていないことに着目し、まず、便秘の改善を目指しました。ご主人、主治医に相談、報告、ヘルパーも参加して担当者会議を行い、すすめることにしました。
それまでも下剤を内服していましたが、毎日内服すると下痢便のときもあり、内服を休むと便秘になっていました。そのため毎日入っているヘルパーに下剤を内服した日、排便があった日を記入してもらい、下剤と排便の関係をみていく中で、3日ごとの下剤内服で排便が調節でき、結果的に異食行為もなくなりました。
事例2 動悸と不安焦燥感と薬の関連
男性、要介護4、診断名は脳血管性認知症です。ヘルパーと訪問看護を利用していました。別の病気で入院した際に内服していた鎮静催眠薬などが退院後も処方されていました。しかし、ご本人からは動悸や身の置き所がないなどの訴えがあり、不眠や不安で大きな声を出す場面もありました。
対応としてはケアマネジャー兼務の看護師が内服薬の影響を考え、主治医に相談しました。結果、内服薬を中止し様子をみることになりました。同時に奥さんの献身的な介護も効果がありまた。寸劇でごらんいただいた「良い対応」そのまま実践できるかたでした。私たちも多いに学ばされました。その結果、本人の物忘れは変わりませんが、とても穏やかになりました。
事例3 外出したまま行方不明
外出したまま自宅に戻れなくなってしまった例です。女性で要介護2、診断名は老年期認知症、ご家族はおりますが、日中は一人でした。デイサービス、ヘルパー、訪問看護などを利用していました。
経過は平成19年1月午後、外出したまま行方不明となってしまいました。いろいろ探しましたがみつからず、捜索願いを出すため警察に出向いた時に、3キロ位離れた見ず知らずの地域の方が車にのせてつれてきてくれました。見つからなければ最悪の事態も予測されたのでつれてきていただいた時は、ほっとしました。あとで話をきいたところ、自宅前で倒れていて、ご飯を食べさせてくれ、少し休ませてから、つれてきてくれたとのことでした。命の恩人です。秋田市民はとっても親切でやさしいと本当に感謝でした。
認知症の方の対応で最も留意していること
ご本人を理解し、信頼関係を築くことです。そのために私たちは、まず、ご本人の生きてきた70年や80年の過程をできるだけ知ることに努めています。特にご本人の「輝いている頃」を知り、関係者で共有するようにしています。
ご本人が話されたことを付箋に書き込み、関係者がいつでも見れるように一覧にしています。主に訪問回数が多いヘルパーさんが記録しています。認知症の方は最近の出来事は忘れても、自分が子供の頃のことや若い頃の事、人生で最も充実していたころのことはとてもよく話してくれます。
ご本人、家族は頑張っている
ある認知症のご本人に、一番困っている事は何ですかと問いかけたことがあります。その方は「なぜこうなのか、自分自身に腹が立つ」と話しておりました。物忘れすることをどうにも出来ず、悩んでいる姿が感じられました。「神様だって血圧があがる」と言ったのはアルツハイマーの方を介護しているご家族の言葉です。「病気なのだから怒ってはいけないと、理屈ではわかってはいても、気持ちをおさえることができない。神さまだって血圧があがると思うよ」と話されていました。次もご家族の言葉です。何回教えても忘れてしまう。「でも10回言えば1回位はわかってくれるのではないか」と思うから教えたいと話されていました。このようにご本人はじめ、家族の方たちは懸命に頑張っています。私たちは何とか支えになれればと思っています。
在宅ケアで大切と感じていること
1.こ本人を中心に家族、主治医、サービス関係者の連携が必要である事
2.早期診断、早期治療です。私たちが出会う頃は病状が進行している感じをうけます。もう少し
早い段階で出会う事ができればと思っています。
3.地域住民の協力が必要と感じています。事例3のように家族やサービス事業所だけでは限界
があります。地域住民の力が必要です。
4.台本を差し上げます。
早期発見、早期治療のためにはとにかく認知症の病気を知ってもらうことが大切です。そのためには私たちだけでなく、地域で皆さんに寸劇をやってもらい、認知症の理解をすすめてもらいたいと考えています。台本をおあげしますのでどうぞ町内会劇団をつくってもらえませんか。認知症の理解のために一緒に活動できればと願っております。