第28回医療を考える集い   

 

「 が ん 」
-どうすれば防げるの?どうすれば見つけられるの-

        
平成18年1月28日(土)午後1時30分〜午後4時30分

秋田ビューホテル・4階
入場無料

プログラム

総合司会

 並木 龍一

あいさつ

 

秋田市医師会長

 大野   忠

 

祝   辞

 

秋田市長

  佐竹 敬久

秋田県医師会長

  寺田 俊夫 様

 

基調講演

 がんの予防について  
                                

          秋田大学医学部社会環境医学講座教授     本 橋    豊 氏

 

 

シンポジウム

                          司会  加賀谷   学 

 

 体験発表
                            並木クリニック

 並木 岡一   氏

シンポジスト

 肺がんの早期発見について                         
                       秋田赤十字病院 第二内科部長

 三浦 一樹 氏

 大腸がんの早期発見について
                    秋田赤十字病院 第二消化器科部長

 山野 泰穂 氏

 乳がんの早期発見について
                              白根病院 診療部長

 鈴木 裕之 氏

 前立腺がんの早期発見について
               秋田大学医学部 生殖発達医学講座助教授

 土谷 順彦 氏

 セカンドオピニオン並びにインフォームドコンセントについて
                        市立秋田総合病院 外科医長

 橋爪 隆弘 氏

 

 質 疑 応 答

 

総合司会(並木龍一)
 第28回医療を考える集いを開会したいと思います。会に先立ちまして、この記録的な大雪、悪路の中このように沢山の皆様方にご参加いただき秋田市医師会より厚く御礼申し上げます。本日の総合司会を務めます秋田市医師会広報委員会の並木でございます。
 今回のテーマはズバリ「がん」です。皆様にとって一番かかりたくない病気、或いは、一番興味のある病気の一つではないかと思います。特に新聞報道等でご存じの方も多いと思われますが秋田県はがんの死亡率が全国で8年連続ワースト1位です。しかし、最近の医学の進歩によりがんは治る病気になってきています。しかし進行したがんは今でも悲惨な状況にかわりはありません。そこで今回は、がんの予防そして早期発見をテーマに会を進めていきたいと思います。シンポジウム終了後に皆様からご質問、ご意見等を取り入れまして先生達と討論する時間を充分に取りたいと思いますので、積極的なご発言よろしくお願いいたします。


大野忠秋田市医師会長
 本日は第28回の医療を考える集いですが、ようこそおいでくださいました。たくさんの皆さんにお集まりいただきましたことにまずお礼申し上げます。
 この会は年1回開催され、28回になったわけですが、医療や行政に関係する人々だけでなく、職種や年齢、性別を問わず、あらゆる市民の方々と現在の医療保健福祉の問題を考え、討論し、市民の健康と幸せのためにより良い医療のあり方を考えようという目的の集いです。
 毎回たくさんの皆さんに参加していただき、貴重な意見をいただいておりますが、今日は「がん」の問題を皆さんと一緒に考えたいと思っております。
 ガンは今では不治の病ではありませんが、依然として死亡原因の1位であり、特に秋田県はがん死亡率8年連続全国ワーストワンです。もっとも秋田が全国ワーストワンであるのは「がん」だけではなく、脳卒中もそうで、いわゆる生活習慣病と言われるものの総合ワースト1位です。言うなれば秋田県は日本で最も不健康な病気の多い県と言うことになるわけですが、これはなんとか克服し、日本一の健康で明るい県にしたいと医療者として私たちは願っています。
 さて今月の始め、NHKのテレビ番組ががんを取り上げ、その中で秋田県はガン拠点病院が無く、がん専門医も少なく、ガン患者さんへの在宅医療もなされていないとの報道がありました。たしかにガン拠点病院が決められていないのは確かですが、ガン患者さんに対する在宅医療やホスピス、終末医療などは決して誰もやっていないのではなく、市内の開業医、かかりつけ医によってかなりなされています。秋田市内の内科外科系の開業医は約120件あるのですが、今回その内の70件で調べたところでは40件、内科外科系以外の科でも9件程度の先生ががん患者さんへの往診や在宅医療をしていますし、その内37件は最後の看取りまで行っています。つまり在宅でのがん診療は相当されていると言うことです。少なくとも秋田市のガンの診療レベルは全国レベルより劣っていると言うことはありません。私はNHKの間違った報道は地道に真面目にやっておられる先生達の仕事が市民に広く知られていない、市民の方も普段からかかりつけ医をきちんと持つという形になっていない、病院と診療所の機能分担や連携、つまり病院と開業医のそれぞれの医療の受け持ち部分がうまくかみ合うという仕事の分担や相互の情報交換が不十分であるというような所に原因があると考えています。
 今日はガンの予防や早期診断と言うところが主な話題ですので、ガンの在宅医療や終末期医療ということはいずれまた機会を見て取り上げたいと思いますが、秋田大学もがんの研究や診療に力を入れております。がん拠点病院がないのはがん診療レベルが低いのだと誤解されないようにお願いいたします。繰り返しますががん診療レベルは決して全国に比べ劣っているわけではありません。
 今日の話が皆様のお役に立つことを願っております。



佐竹敬久秋田市長 (代読:秋濱哲雄秋田市保健所長)
 秋田市保健所長の秋濱でございます。本来であれば佐竹市長がまいりましてごあいさつ申し上げるところですが、他の公務のため出席できませんので代わりまして申し上げます。
 先ずもって「第28回医療を考える集い」の開催をお喜び申し上げます。
 秋田市医師会の皆様、そして本日ご来場の皆様には、日頃から市政全般にわたりまして格別のご支援・ご協力を賜り、この場をお借りいたしまして厚くお礼申し上げます。
 この「医療を考える集い」は、秋田市医師会が地域保健活動の一環として毎年実施されており、毎回社会が抱えるタイムリーなテーマを選ばれているようですが、この集いで討論されたことが、市民の健康の保持・増進の現場においても生かされ多大な効果を上げていると伺っており、当市としても心から感謝申し上げる次第であります。
 さて、日本人の平均寿命は、保健衛生の向上や医学・医療の進歩等により著しく延び、男性が78.64歳、女性が85.59歳と男女そろって過去最高を更新しております。
 その一方で、少子高齢化とともに、がんや脳卒中などの生活習慣病による働き盛りの壮年期死亡や、ストレス社会の影響からの自殺率の高さなどが深刻な社会問題となっています。
 今回の「医療を考える集い」は、これらの問題の大きな原因の1つとなっている「がん」がテーマとされております。全国では「がん」の死亡順位はこの5年間を見ると女性では平成15年に胃がんに代わり大腸がんが1位になり、男性では肺がんの延びが目立っております。また、「がん」が早期に発見できた場台、進行がんとの比較において5年生存率と医療費で、顕著な差があることが判明しております。
 本市における「がん」の死亡率は、近年は横ばい傾向にあるものの、死亡順位では1位を占め、依然として高い数値を示しておりす。
 本市では「がん」などの生活習慣病を予防するため、平成15年3月に策定いたしました「健康あきた市21」に基づき、運動や食生活などの生活習慣を改善して、病気になることを予防する、いわゆる一次予防を重視し、各種施策を積極的に展開しているところであります。しかしながら、酒や塩分の多いものが好きな秋田の食文化などから、生活習慣病に罹患してしまう方もまだ多く、一次予防のみならず、病気の早期発見、早期治療といった二次予防の健康診査も非常に重要と考えております。
 また、近年増加傾向にある前立腺がん検診や、マンモグラフィーを導入した乳がん検診など6つのがん検診を実施し、充実をはかってきております。
 「がん」に関しまして市民誰もが関心のあるところであり、この会場にお集まりの皆様には、「がん」という病気に対する知見をより一層深められますことを心よりご期待申し上げる次第であります。
 終わりになりますが、本日の「医療を考える集い」が実りあるものとなりますよう、そして、秋田市医師会ならびにご来場の皆様のますますのご発展をお祈りいたしまして、挨拶といたします。


寺田俊夫秋田県医師会長

 本日は第28回の医療を考える集いに、このように多くの皆様がご出席をいただきありがとうございました。この医療を考える集いというのは、秋田県医師会が、全県の10地区にお願いいたしまして、今から20数年まえから毎年行っている事業です。今年は、他の地区では例えば「脳卒中問題」、「認知症にならないために」等それぞれのテーマで行っています。本日は「がん」というものをテーマに皆様と一緒に考えていこうということです。大変良い会になるようにお祈りいたします。
 せっかくの機会ですので、少しだけ医師会について皆様にお話しさせていただきます。
 たぶん、皆さんは医師会というと、また「政治等のこと」というイメージが非常に強いと思いますが、しかし実際に行っている活動というものは、政治活動はほんの一寸で、90%以上が医療をどうしようかという活動です。例えば、患者さんが私の診療所に診察に来ます。しかし、今は自分だけで治せる時代ではありません。当然看護師、検査技師等チーム医療で治していかなければいけません。と、同時に自分一人の力では難しい場合は専門の先生にお願いしなければいけません。色々な連携をしていかなければならない、そういうシステムを作っていくことが医師会の仕事で今までやってきています。例えば、生まれた時には乳幼児保健をどうするか、学校に入学すると学校医・学校保健をどうするか、就職すると産業保健をどうするか、老人保健・検診をどうするか、救急医療体制をどうやって作っていくか等様々な事を、医師が手を携えて行っています。しかし、どうしても政治が必要になってきます。先ほどのお話でもありましたが、秋田県はがんの死亡率全国1位です。不名誉なことではありますがその原因は何かよく分かっていません。一般的にはがんの死亡率が一番高いというと、それは治療が悪いのではないか、すぐそこに結び付く訳です。本当はそんなことではないんです。それは死亡率だけではなく、80代・90代以上でガンで亡くなる人が多いのか、40代、50代で亡くなる人が多いのか、そういうところが非常に問題になります。どういうガンで亡くなっているのか、原因はいったい何か、検診が不十分なのか、治療が足りないのか等、様々な情報をきちんと集め、登録事業を行っていかなければいけません。ガンは高齢化社会になると増える病気です。平均寿命が短い国ではガンは少ないです。ガンになる前に亡くなってしまうからです。ある意味もしかすると、ガンの死亡率が高いということは高齢県で長寿県で案外いいのかもしれません。ただ調べてみなければならないことは沢山あります。そういうことを一つ一つ行いながら対策を作っていかなければならないのです。そしてその対策を行うためには政治が係わるため、少しは政治に関すること、政治に物申す活動をやらなければならない訳です。
 しかし、殆どは地域で医療体制について考え協議をしボランティア活動を実施しているのが医師会活動であるということを皆様方にぜひご理解していただきたいと思います。
 がん拠点病院の話ですが、昨日の秋田魁新報の夕刊に投稿をいたしましたので、ご覧いただきたいと思います。
 秋田県のがん治療は全国で飛び抜けて最先端医療を行っているわけではないかもしれませんが、一般的な医療はもちろん色々な先端医療も十分に、秋田県内でできますので、みなさん安心してください。先端医療も十分に秋田県で色々行っていてがんばっておられる先生は沢山います。1つの拠点病院ではなく、色々な病院で行っています。拠点病院は別の役割のために作られた制度ですが、拠点病院がガンの治療をやっている、それ意外の病院は何もやっていない、と誤解を与えるためそれは問題だということをいままで話してきたわけです。今日ご出席の先生達は、拠点病院にはなっていませんが、ガンの治療にかけては天下一品、全国どこに出しても恥ずかしくない先生方です。そういうようにレベルはしっかり確保しているんです。名前だけではなく実績をみてください。しかし、足りないところはもちろんありますが、それはみんなで考えていきましょう、ということが今日の会だと思いますので、1つでも2つでも皆さんにご参考になることがあれば大変に幸せだと思います。ご静聴をよろしくお願いいたしまして挨拶とさせてただきます。今日は皆さんお集まり下さいましてありがとうございました。

        

    基 調 講 演 −

がんの予防について
〜とくに秋田県の胃がんと大腸がんの予防について〜

 秋田大学医学部社会環境医学健康増進医学分野座教授 本橋 豊 氏

 がんは日本人が死ぬ原因の第一位です。毎年32万人くらいの人ががんで亡くなります。日本は健康長寿の国になりましたが、これもがんで死ぬ人が多くなった理由のひとつです。がんは昔は治らない病気の代表でしたが、今は適切な治療によって治る病気になっています。正しい知識と望ましい生活習慣と健康的な社会環境を整えることでがんを予防することができるのです。

(どんながん増えているのでしょうか)
 戦後の日本のめざましい経済成長は豊かな社会をもたらし、食生活をはじめとする生活習慣を大きく変えました。日本では昔は胃がんが多かったのですが、最近では減少傾向にあり、一方、大腸がん・肺がん・乳がんというようながんが増加傾向にあります。これには食生活をはじめとする生活習慣の変化が関係していると推測されます。

(がんの原因は?)
 遺伝的要因、生活習慣・行動要因、環境要因が考えられます。
 外国では日本より乳がんや大腸がんが多い傾向が認められます。

(タバコの影響)
 日本の喫煙は諸外国より高く、改善が必要です。喫煙者を減らすことでがんを減らすことができます。

(がんの発生に寄与する要因)
 ハーバード大学の研究によると、喫煙が30%、成人期の食事と肥満が30%づつ寄与していると推測されています。喫煙の影響が大きいことがわかります。

(秋田県のがん死亡の現状)
 秋田県のがん死亡率は全国一です。部位別のがん死亡率で見ても、胃がんが第一位、結腸がんが第二位です(平成16年のデータ)。(秋田県で胃がんが多い理由は?)塩辛い食べ物を食べる、たばこを吸う、酒をたくさん飲む、ヘリコバクターピロリ感染率が高い、などが考えられます。

(秋田県の大腸がんの多い理由は?)
 よくわかっていませんが、運動が少ないこと、お酒をたくさん飲むなどの要因が疑われます。

(がんの予防要因と危険要因)
 がん予防の基本は予防要因を強化し、危険要因を減らすことです。例えば、胃がんでは、高食塩食品が危険因子の候補で、野菜や果物が予防要因の侯補です。野菜や果物をより多く摂取し、塩分を控えめにすることが食生活の基本となります。

(がん検診を受診すること)
 がん検診には利益になる点と副作用などの不利益な点があります。科学的に有効性が証明された検診は積極的に受けるようにするのが良いでしょう。胃がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんなどで有効性が証明されている検診がありますので、積極的に受診するのが良いでしょう。胃がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんなどで有効性が証明されている検診があれますので、積極的に受診するのが良いでしょう。

がんの要因の寄与率の推移 / ハーバード大学、1998年

  ・喫煙            30%    ・アルコール        3%
  ・成人期の食事と肥満  30%   ・社会経済的要因     3%
  ・運動不足          5%   ・環境汚染          2%
  ・職業性の要因       5%     ・放射線           2%
  ・がんの家族歴       5%   ・薬物・医療行為      1%
  ・ウイルス等感染      5%   ・塩分・食品添加物
          農薬汚染等 1%
  ・周産期・成長期の要因  5%




−シンポジウム−

司会(加賀谷学)
 秋田市医師会広報委員の加賀谷が進めさせていただきます。よろしくお願いいたします。本橋先生から基調講演をいただき、がんの予防について非常に解りやすいお話をいただきました。今回のシンポジウムのテーマは「がん」です。がんをよりよく深く理解するために専門の先生から情報をいただく予定をしていますが、その前に医療の現場ではがんを始めとする疾患を克服しようとする患者さんが主役だと考え、医師であり自らもがんの闘病経験のある並木岡一先生より直接お話を伺いたいと思います。
 そして4人の専門の先生より「がん」について情報提供をいただきたいと思います。さらに、がんが発見された場合にどのように情報提供を受け治療に向かうべきか、セカンドオピニオン、インフォームドコンセントについても提言をいただきたいと思います。


                     
 体験談

                                                                   並木クリニック     
並 木 岡 一    氏

 私は、この10年間で別々の6回の「がん」に罹患しました。
 医者の不養生の典型で、胃内視鏡等の検査等は受けた事が無く、初めての「がん」は「進行がん」でしたが、幸いにも完治する事が出来ました。しかし、「多重複がん」の体質のため、その後も「がん」に罹患しましたが、術後の定期検査を受けていたため、早期に発見され早期治療により、今に至っています。「がん」にならない事が一番ですが、最低1年に1度の健康診断を受けていればたとえ「がん」になったとは言え「早期がん」の可能性が高く、早期治療により現在の医学では治る病気だと考えます。自分の経験から、「がん」で苦しまないためには、定期検診を受ける事が一番だと思います。

<私のがん病歴>

 @胃がん 平成 7年 1月  胃全摘出術施行(BorrmamV型)
 A大腸がん 平成12年 3月  大腸ポリープ切除術施行(一部に腺がん)
4月  大腸部分切除術施行
 B左肺がん 平成12年 8月  左肺主気管分岐部に扁平上皮がん発症
12月  手術不能部位にて放射線治療を35回施行
 C皮膚がん 平成15年12月  右側頭部に皮膚がん(有棘細胞がん)発症
12月  腫瘍切除術施行
 D前立腺がん 平成17年 2月  PSA高値にて前立腺生検施行、前立腺がんの診断で現在、GnRHagonist投与中
 
 E右肺がん 平成17年 9月  右肺がん発症
11月  胸腔鏡下に腫瘍摘出術施行
術後10日で仕事に復帰
 

 


肺がんの早期発見について

                              秋田赤十字病院第二消化器科部長 
三浦 一樹 

 講演概要 − (会報編集員会作成)

 日本における肺がんの死亡率は増加しており、現在はがん死亡の第一位となっている。秋田県は全国平均と比較して肺がん死亡率の高い県でありその予防、早期発見が重要な課題となっている。以上の点をふまえ、下記のスライドを使って、秋田県における肺がんの特徴、診断上の問題点、早期診断の重要性、喫煙と肺がん発症との因果関係、予防法につき詳細かつ平易な内容をご講演いただいた。

 




大腸がんの早期発見について


                               秋田赤十字病院第二消化器科部長  
山野 泰穂 氏

 「大腸がん」は日本では急激に増加しており、近い将釆日本人に最も多く見られる「がん」になることが予測されています。こういった現象は、日本人の生活習慣の変化に原因があると考えられ、喫煙、食事・生活環境などの外部因子が大きくかかわっていると考えられています。特に大腸ガン増加の最大の理由として指摘されているのが食生活の欧米化(高タンパク・高脂肪・低食物繊維食)と言われています。
 ところで秋田県は全国的にみても「大腸がん」の頻度が非常に高い地域であり、北日本は一般的に高い傾向であることは厚生省の統計でも示されていますが、決して食生活が他県に増して欧米化しているとは考えられないため、他の要因の関与が疑われます。
 「大腸がん」は「早期がん」と「進行がん」に大別することができます。前者は腸の表面の比較的浅いところのもので、後者は腸の筋肉の層に入り込んだ、あるいは越えて拡がったものです。当然早期癌のうちに発見、治療する方が生命予後に関しても優れています。しかしどのようにしたら「早期がん」を発見できるかについては非常に難しい問題があります。一般的に血便、便柱が細くなる、便秘、腹痛などが「大腸がん」の症状として知られていますが、これらは進行癌の症状であり、早期癌では全く症状がありません。
 我々が通常見つけている「早期がん」は、様々な理由でスクリーニングを希望してきた方、便潜血反応で陽性を示した方、血縁あるいはご自身に大腸も含めた「がん」や「ポリープ」の既往がある方等です。逆に症状が有ってこられる方で発見された「大腸がん」のほとんどが「進行がん」です。但し便潜血反応検査はあくまで精密検査をうける動機の一助であり、「早期がん」を指摘できるものではありません。便潜血反応陰性だから「がん」がないことにはならないのでご注意してください。
 また「早期がん」を発見できるのは内視鏡検査が優れていますが、内視鏡医の技量や「がん自体」が内視鏡検査でも指摘が困難であるものもあり、1回の検査では見つからないこともあります。
 従って、「早期がん」を発見し、的確に診断治療するためには、積極的に検診を医療機関で受けられ、複数回の内視鏡検査を行う必要があるのが現状です。できれば専門医がいる医療機関を受診されることをお薦めします。






乳がんの早期発見について

                                             白根病院   
鈴木 裕之 氏

 乳がんは現在、日本人女性のがんの中で罹患率第一位であり、40〜50歳代に最も多く、大部分が女性ホルモン(エストロゲン)の刺激で発育します。「しこり」が主な症状なので自分で見つけることができるがんです。
 乳がんをみつけるには自己検診とマンモグラフィ検診の活用が勧奨されます。

1)自己検診の方法
 月一回、生理が終わって1週間たってから、閉経後は月一回、日を決めて行いましょう。異常があったらまず外科を受診、上半身、裸になって鏡の前でまず正面から、次に腕を上げて自分の乳房をよく見ます。左右の乳房のかたちに違いはないか?、皮膚にくぼみやひきつれはないか?、乳首が陥没したり、ただれてないか?などを観察しましょう。次にあおむけに寝て、人差し指、中指、薬指の腹をそろえて腋の下から体の真ん中に向かって乳房を滑るように触れます。そして、乳房にしこりがないか?乳首から茶色あるいは赤い分泌物がないか?をチェックしましょう。

2)自己検診の目的
 「しこり」を見つけるためだけではなく、ふだんの自分の乳房の感触を覚えるため、そして「しこり」ができたときに迷わないために行います。

3)自己検診の効果
 図に示すように自己検診を定期的に行っている人ほど、発見時のしこりの大きさが小さく、病期も早いのです。(北村道彦ら;秋田県内39施設のアンケート集計(1997年)による)。

4)マンモグラフィ検診
 秋田県では2005年から全県で導入され、40歳以上の方は2年に一回撮影することが勧められています。マンモグラフィ検診と従来の視触診による検診で発見された乳がんを比較してみると、発見時のしこりの大きさは16mmと21mmと差があり、リンパ節転移のない症例の割合も93%と70%とマンモグラフィ検診の方が優れていました。(仙北組合総合病院吉田節郎先生のデータより)。

5)乳がんになりやすい人は、初潮の早くきた人(12歳以前〉、閉経が遅くなった人(55歳以降)、ご両親やご姉妹に乳がんの人がいる人、授乳経験がない人、子供を産んだことのない人、脂っこいものや肉をたくさん食べる人、太っている人、たばこを吸っている人、夜更かしが多い人です。お子さんをたくさん生んで秋田県の少子化解消に貢献しながら、秋田の主産業であるお米をたくさん食べながら、乳がんを予防しましょう。






前立腺がんの早期発見について

                           
                秋田大学医学部生殖発達医学講座泌尿器科分野助教授
                                          
  
土谷 順彦   氏


 これまで、日本人は欧米人と比較して前立腺がんの罹患率は低く、何らかの遺伝的あるいは環境的な防御因子の存在が示唆されてきた。しかし、近年本邦においても、前立腺がんの罹患率、死亡率はともに急激な増加を認めており、その傾向は現在も持続してい。一方、米国では1989年から急激な前立腺がんの罹患率の増加を認めたものの1993年には減少に転じ、死亡率も1991年をピークに減少に転じている。さらに、本邦における前立腺がんの罹患率は米国の約1/6であるにもかかわらず、死亡率は1/2と高い。このような本邦と米国における前立腺がんの罹患率、死亡率の傾向の差は、前立腺がんの早期発見における前立腺特異抗原(PSA)の導入によるものと考えられている。米国では1986年に再発の診断目的でのPSAの使用が認められてから、診断マーカーとしての有用性が認めるやいなや急速に前立腺がんのスクリーニングに広く用いられるようになっている。PSAによるスクリー二ングが前立腺がんの死亡率に寄与するか否かについては、現在大規模な無作為前向き試験が米国(PLCO)と欧州(ERPSC)で進行中であり、その結果を待たねばならないが、オーストリアのチロル地方の住民を対象としたコホート研究では、積極的に検診にPSAを導入しているチロル地方において、その他の地域と比較して前立腺がんによる死亡率の低下が認められており、その理由
としてPSA診断による限局性前立腺がんの増加と転移がんの減少があげられる。
 秋田県においても前立腺がん検診を行う自治体が増えてきているものの、秋田市ではようやく平成16年に前立腺がん検診が開始されたばかりであり、その受検率は全県で15%、秋田市では6%にすぎない。米国では55歳以上の男性の75%が、チロル地方では45歳以上の60%がPSA検査を少なくとも1回以上受けているといわれており、PSAが導入されても進行性前立腺がんの減少や死亡率の低下といった効果を期待するには、前立腺がん検診の受検率を上げるより一層の努力が必要である。






インフォームドコンセントとセカンドオピニオン

                           
                           市立秋田総合病院外科   
橋爪 隆弘   氏


 
がん治療において必須のものとして、インフォームドコンセント、治療目標の決定、適切な症状コントロールがある。(図1)

図1

   がん治療に必要なもの
 インフォームドコンセント
 ・患者、医療者との治療目標決定
    (セカンドオピニオン)
 ・適切な症状コントロール

 インフォームドコンセントとは、「説明と同意」と言われているが、実際には「がんの告知」と「検査治療方法の説明と同意」を意味している。(図2)

図2
  インフォームドコンセント
1.真実の症状・病名説明
    (がんの告知)
2.検査・治療方法説明と同意


 平成14年11月から市立秋田総合病院に入院する患者さんには、「真実の病状・病名を知りたいか」本人に確認している。それによると、90%以上の患者さんが真実の病名つまり「がんの告知」を望んでいた。平成17年4月に個人情報保護法が施行されたが、真実の病名を「本人の承諾なく、家族に説明してはならない」とされている。(図3)つまりがんの診断がついたとき、法律上は、本人に説明する前に、家族に先に相談してはいけないことになった。「真実の病名の説明」つまりがんの告知は、ただ告知することがその目的ではなく、今後の治療方針やケアを医療者と共に考えるためのものであって、法律があるから患者さんに先にがんの告知をするのではない。

図3

       医療・介護関係事業者における個人情報の
       適切な取扱いのためのガイドライン
               平成16年12月24日厚生労働省医政局
                           医政第1224001号

家族等への病状説明については患者(利用者)への医療の提供に必要な利用目的と考えられるが、本人以外の者に病状説明を行う場合は、本人に対し、あらかじめ病状説明を行う家族等の対象者を確認し、同意を得ることが望ましい。




 がんの治療には、手術、抗がん剤治療、放射線治療など様々な方法がある。治療方針は主治医から示されるが、専門医の意見を聞くことが「セカンドオピニオン」である。(図4)セカンドオピニオンは、本人が納得した治療を受けるためのものであり、主治医に遠慮することはない。実際には紹介状や画像などを持参して受診し、返事は必ず主治医に持っていくことがルールである。(図5)また保険外診療の場合があるので、受診する医療機関に問い合わせる必要がある。

図4
           セカンドオピニオン
 1.担当医以外の専門医の意見を聞くこと。
 2.客観的な意見。
 3.安心と満足を提供する。

 納得した治療を受けてもらうことが目的


図5
          セカンドオピニオンの受け方

1.病院に問い合わせる
  完全予約制の場合が多い
  料金の確認
2.主治医に紹介状を書いてもらう。その際、検査資料など(X線写真)
3.受診する前に、聞きたいことを整理しておく






質 疑 応 答

司会 基調講演をいただいた本橋先生、5名のシンポジストの先生方に、この場で質問・意見がございましたら遠慮なくいただきたいと思います。

質問A 3年前に前立腺がんで手術を受け、その5ヶ月後に大腸がんで手術を受けましたが、今後心配なことはがんが何処に転移していくのかです。膵臓がんにかかると大変だということも聞いていますが、教えていただきたいのですが。

土谷氏 前立腺がんの手術に関しては、おそらく早期のがんかそれに近いがんだと思います。発見の時点で転移があった場合は、おそらく再発してもおかしくない時期ですが、そうでないとすれば、今後再発してくる場所は、転移で見つかるものではなく、局所で見つかる可能性が高いと思います。早期で見つかった場合は、再発する可能性は非常に低いと思われます。PSA検査は、がんの診断だけではなく、治療の経過を観察するためにも非常によい検査ですので、PSA検査を率先して受けていただきたいです。

山野氏 がんの程度により違いがありますが、一般論として局所再発といって、手術した場所あるいは、周囲のリンパ節、もう一つは肝臓・肺という他臓器に発生する場合があります。ただこれは、事前に予測することは非常に難しいです。前立腺がん程ではありませんが、大腸がん検診では腫瘍マーカという血液での検査ができます。また、画像診断等があり、1年あるいは半年に1回定期的に検査を受けることがよいのではと思います。膵臓がんを診断するのは非常に難しい。いかなる検査をしてもなかなか見つけることが難しい疾患です。
 また、専門の先生に定期的に超音波検査を受ける機会を持つことも1つです。

質問B 父親、兄弟が食道がんで若くして亡くなっていますが、自覚症状が無く診察を受けた時は末期状態でした。食道がんの自覚症状、検査方法、早期発見、予防法について伺いたいのですが。

鈴木氏 自覚症状としては、物が詰まる、つっかえるなどです。水は大丈夫なのですが、ご飯等はつっかえて吐いてしまう。これが食道がんに特徴的な症状です。症状が出た時の食道がんは進行がんです。食道がんは、周りに心臓・肺・大動脈等非常に命に関わる大切な臓器に囲まれているので、進行がんになってしまうと、手術では手遅れ、抗ガン剤が効かない状態で、非常に短い期間で亡くなる方が多いがんです。早期発見のために、毎年1回、自分の誕生日でもいいですので、定期的に内視鏡検査(カメラ)を受けていただきたい。予防としては、お酒、たばこはやめましょう。

山野氏 お酒を飲んだとき、顔が赤くなったり、青くなったりする方は、お酒を分解する酵素に異常があるので、お酒はやめるべきです。

質問C 甲状腺がんになり声がでません。講演で大変参考になるお話を伺いましたが、お願いがあります。難しい医学用語での説明ではなく患者の立場にたってわかりやすく説明していただきたい。また相談できるような機関が欲しいです。

橋爪氏 我々自身ももっと時間があればと思っているのが率直な感想です。主治医が説明が必要だと思うときは時間を取るが、患者さんが説明を求めているかどうかということが、伝わらない場合がありますので、患者さんの方から主治医に対して時間を作ってくれないかと話をしていただきたい。主治医(かかりつけ医)と患者さんのコミニュケーションを密にする必要があると思います。

寺田氏 「相談をしたい、相談を受けたい」という事に関しては、現在、国で4月から新しいシステムを作ろうと動いてきています。先ほどの橋爪先生の話は大変よい話で、もっともなことですが、現実問題として病院の医師は大変忙しい状態にあります。そのことを皆さんも少しわかっていただきたいと思います。主治医の他に相談医を是非持っていただきたいと思います。相談医はかかりつけの医師でもいいんです。何かの時に相談する医師を是非もっていただきたいと思います。

三浦氏 人の一生の最後の部分に係わる大きな問題ですので、短い時間の説明でわかるということは非常に難しいことです。そのため、やはり夜の8時過ぎに十分な時間をとって患者さんに説明すべきです。しかしその時間は患者さんから指定された時問ではなく、実際は診療を終えてからになります。多くの病気の原因にたばこが関与していますので、患者さんにも責任はあることだと思います。医師と患者、家族が病気に対して協力しあって良い方向にもっていきたいと考えています。

総合司会 がんの予防、早期発見に対して、今すぐにでも実行できる話が沢山ありました。来年も皆様に少しでもお役にたてる会を開催いたしたいと思います。長い時間ありがとうございました。