電子カルテ導入の苦労話から早3年。ようやく慣れたと思ったのもつかの間、1年前に新規版の電子カルテが登場した。メーカー側の謳い文句では、データベースをこれまでのAccessから、「高速かつ堅牢な」SQLに移行することににより、データ破損の危険性がなくなり、多端末からの接続も高速に行えるというものだった。その内容に大いに期待した私であったが、初期バージョンの不備が改訂され安定したと思われたのは今年に入ってからであった。自分の技術には不安だが、この道では師である熊谷先生に教えを請いながら、お互い移行することになった。 今回の移行に当たって、これまで使用していた電子カルテのメリット/デメリットを少しでも改善できればと願っていた。幸いデータベース部分以外はAccessが引き続き使用されるため、これまで先輩ユーザーからの情報や参考書を片手にして小改造してきた手法は使用可能そうである。最近では高機能かつ使い勝手の良い電子カルテが登場してきたが、我々のカルテの特徴は低コストで手作り感覚である。従って、導入・保守も基本的に自分だし、内容のカスタマイズも自己責任(!)において自由である。以下の点について、新カルテに改良を試みた。 ①一覧性の改善:患者さんを目の前にしてカルテから瞬時に病状・治療経過が把握できるように、第一画面に最近のSOAPやバイタル、処方などの履歴やコメント欄をわかりやすく表示。②能率向上:例えば、ある目的のボタンが何回も奥の階層にあっては不便なので、頻用するものは手前の画面に移す。入力枠、ボタンも操作しやすいように機能的に再配置する。③新機能:自院のスタイルに合わせて作った日計表などの集計レポートや、レセプト作成準備用の(各月)処方一覧印刷機能など。④視力の低下もあり、昨年のディスプレイ買い替えに引き続き、カルテソフト上でのフォント拡大。また、気分改善や患者さんへの印象も考え、カルテの色彩・デザインの変更など。 さすがに熊谷先生は早くもカスタマイズを問題なく終えたとのことであったが、私の技量では、試行錯誤の繰り返しである。現在、職員を含めて改造版カルテを試用中であるが、次から次へと「ここが使いにくい」にこはこうなりませんか!」との手厳しい指摘がある。その度に対応可能なものは「はい、はい」と修正にかかる。どちらが使用人か判らない状況である。自分にはもちろん職員一同に使いやすい電子カルテになることにより、診療効率が向上し、入力ミスも減り、さらに職員の受けも良くなればと願いつつ地道な作業を繰り返している。この原稿が載る頃には本格稼働していると思う。前回の原稿では「自由に走り回れる自転車」と比喩したが、無事、「坂道も楽に上れる原付自転車」ぐらいになればと期待している。
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