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<春夏秋冬>

発行日2017/02/10
秋田赤十字病院  下田 直威
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「三国志」を読んでみたら
 
  昨年11月より、前任の故大嶋厚志先生に代わり会報編集委員に加わった下田直威と申します。秋田赤十字病院で泌尿器科をやっております。趣味はサイクリングと読書という事になっており、晴走雨読を理想としております。そこで、最近の読書からの話。
  もともと、高校生のときに渡部昇一の「知的生活の方法」を読んで感動して以来、氏の著作は好んで愛読しております。近著「実践・快老生活」の中で、壮年の修養や人間学には古典を読むべきだと述べられ、肩肘を張らない古典の例として吉川英治の「三国志」を挙げていました。Wikipediaによれば、「三国志」は中国の後漢末期から三国時代にかけて群雄割拠していた時代(AC180~280年ころ)の興亡史で、西晋の陳寿による史書を基として、明代には「三国志演義」が小説として書かれたとのことです。その後もいろいろな作者による「三国志」がありましたが、吉川英治の「三国志」は、これらを基に独自の解釈も加えて、戦時中に新聞小説として連載されたものの新装版のようです。実は私、今までマンガを含めて「三国志」は読んだことがなかったので、早速購入して読んでみたのでした。
  いやはや、こういう物語だったとは驚きでした。むしろ呆れました。そしてそのボリュームに疲れもしました。壮大なスケールの物語ではあります。魏の曹操や呉の孫権よりも、蜀を興した劉備玄徳や軍師・諸葛亮孔明の側に立った小説とはいえ、史実を基にしてはいるのでしょうから、大体の戦いは実際にあったことだと思われます。その大義は別としても、何とまあ延々と続く権力闘争、領土紛争なのでしょうか。敵将の寝返りを誘う謀略なども当たり前に行われています。それも兵法のうちというわけでありましょう。また、不利となればどこまでも逃げ落ち、再起してまた戦いを挑みます。実にしぶといです。こう言っては不遜ですが、先の大戦での玉砕や特攻といった我が国がとるに至ってしまった戦い方とは質的に異なるものを感じました。この戦略性というか兵法哲学が現代の彼の国にも脈々と受け継がれているような気がしてなりません。南シナ海の現状、そして尖閣諸島周辺でのEEZや領海侵犯の常態化。駆け引きをされながら、少しずつ着実に攻め込まれています。
  我が国は明らかに狙われています。これを守るには、自衛隊や日米同盟はもちろん重要ですが、相手の戦略を読み、それに崩されないという確固とした国民の意志が必要だと思います。私如き一医師に何ができるわけでもありませんが、問題意識は失わないようにしたいと感じました。壮年(?)の修養からはやや飛躍した読書感想でしたが、今後ともよろしくお願い申し上げます。
 
 春夏秋冬 <「三国志」を読んでみたら> から