先日、11年間勤務している総合病院での最後の夜間救急外来業務を終えました。私は精神科医です。何年たっても、夜間救急外来の仕事は、緊張感がありストレスを感じながらやっていたと言わざるを得ません。救急外来の拘束時間を終えた時の開放感が今だに、とても大きく感じられるからです。これは、学生時代のテストが終わった後の開放感に近いものがあると以前から思っていました。初診の患者さん、大半は身体疾患がメインの患者さんを診察して、治療方針を決めることへの緊張感からくるものだと思います。しかも、救急車が立て込んだり、患者さんが多い時は特に。元々は、精神的なものに興味があり、しかも、ゆっくり患者さんの話を聞いて時間をかけて診断・治療するところに魅力を感じ、精神科医になりました。しかし、その後、何年も一般の救急外来業務をやることになるとは、想像していませんでした。しかし、そのおかげで、身体症状に対する経験が増え、精神科入院中の患者さんが身体の異常を訴えた時にも、少しは落ち着いて対応できているのかなと思います。 以前、何かの会で、重症身体合併症を有する精神科症例を報告した際、関東地方の精神科の先生に言われました。「よくもそんな身体重症の症例を精神科病棟で、しかも精神科の先生が主治医として診ていますね。うちの病院なら、合併症が落ち着くまでは、精神科に連絡が来ることはありませんよ。」と。地域によって全然違うのだなと思うと同時に、救急外来で知らず知らずのうちに鍛えられているのだと思いました。 そうした中、昨年から今年にかけて、秋田県の精神科救急体制をより効率的に運用するための委員会で、座長をする機会を頂きました。現在、秋田県では、休日夜間に精神科での救急対応が必要になった場合、予め決められた当番病院が対応する輪番制をとっています。しかし、身体合併症がある場合には、一般病院、単科精神科病院、総合病院精神科のどこに振り分けるかの基準が完全には明確ではなく、受け入れ先が決まるまで時間がかかるケースがありました。そこで、振り分け基準をより明確にすることを目的に、この委員会が設立されました。それぞれを代表する先生方、救急隊の代表の方が参加されて、活発な議論がなされ、新しいルールが形になりました。みなさん、本当にギリギリのところで努力されていることがよくわかりました。秋田県における精神科救急の輪番制ができて15年目の節目の時に今回の見直しがなされたことになります。しかも、この新制度は、私が秋田での最後の救急外来業務を終えた後、少ししてからスタートする予定になっています。何か不思議な縁を感じます。 今後、身体合併症があり精神科救急対応を必要とするケースへの対応が、よりスムーズになされ、対応される皆さんのストレスが減少することを願っています。
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