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<春夏秋冬>

発行日2014/09/10
秋田厚生医療センター  木村 愛彦
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夏のある事件
 
 日本は残念な結果に終わったが、4年に1度のビッグイベント、サッカーワールドカップが幕を閉じた。数々の熱戦もさることながら、審判の種々の新技術の導入、特にゴールラインテクノロジーには驚いた。際どいゴールシーンが映像化され、シュートされたボールがゴールラインを本当に越えているかどうか、瞬時に主審の手元に送られる、というアレである。1本のゴールが勝負のみならず国の威信にまで影響するビッグイベント、審判の精神的プレッシャーも相当軽減されたことだろう。同様の手法で、陸上競技やその他のゴールでの、いわゆる写真判定は以前より採用されており、昭和39年の東京オリンピックで世界で初めて導入されたそうだ。
 スポーツの勝敗は時に審判の判定により左右され、皮肉を込めて「審判がゲームを作る」と評されることもある。最近のテレビ放送などでは審判の肉声が流れるものも多い。ラグビーでは、選手が反則を犯さないように審判がアドバイスしながら進行しているのがよくわかる。反則は選手の危険にもつながる競技だからこのようなやり方は良い意味での「ゲームを作る」ことなのだろう。
 スポーツ競技の白黒は時には「疑惑の判定」などで、勝負がひっくり返ることがあるとはいえ、基本的には強いもの、はやいものが勝ち、そうでないものが負けるというのが大原則なので、まあ分かりやすい。
 ところが芸術系の採点となるとそうはいかない。審判(審査員)がゲームを作るどころか勝敗を決めるのだから。県内で7月に行われたある音楽系のコンクールで、当日の審査発表、表彰が間違っていて、後に新聞の紙面で謝罪、訂正されるという事態があった。数人の審査員による採点の単純な計算ミスだったらしいが前代未聞のことである。学生、生徒が主体のこの大会、彼らは青春を捧げているといっても過言ではない。自身も何度も経験しているが、長い努力の結果が一瞬で決するその審査結果の発表は異様な緊張感に包まれる。発表と同時に歓喜の声が沸き起こり、一方、落胆のすすり泣きが聞こえてきたりする、それはそれは重要でドラマチックな数分間なのだ。訂正の新聞発表も見逃してしまいそうな小さな記事、当日から10日も経過しており、遅きに失している感もぬぐえない。とかくこういった「審査もの」は、審査員の感性や解釈も重要な要因であるため、冷徹に突きつけられる結果に釈然としない場合も多い。だからこそデリケートな配慮、取り扱いが格段に求められる。二度とこういったことのないよう、猛省を促したい。
 ゴールラインテクノロジーばりのクリアカットな採点。無理だろうなー、カラオケじゃあるまいし…
 
 春夏秋冬 <夏のある事件> から