私が担当している火曜日の外来で、時間帯によっては、早く診察を終えて部屋を出たいという患者さんたちの素振りが何となく感じられた週が2回続いた。時折、待合室からは歓声やらため息やらが診察室にまで届いてきた。能代商業の一回戦と三回戦がどちらも火曜日に当たっていた。「甲子園」は国民のイベント、出場校は県の代表なのだとつくづく思う。甲子園とは無縁の高校時代、野球以外のスポーツをやっている生徒にとっては、なんで野球だけ全校応援なんだ(たぶん負けるだろうけど、授業がないのはありがたい)、なんでテレビや新聞でこんなに大きく取り上げられるのと、やっかみ半分な思いをしたことは覚えている。 7月末から秋田駅前を中心にジャージ姿の学生グループをよく目にした。前半は身長の高い生徒が、後半はがっしりした体格のいい生徒が目立った。北東北インターハイでの秋田市開催競技への参加選手・監督は約4,200名とのことだった。女子バスケットボールとサッカー、柔道、ボクシング、水球の各競技で、事前検診や救護係として御苦労された先生方も多いのではないかと思う。秋田県勢は女子柔道の52Kg級で準決勝に進んだ本荘高校の選手が目立ったぐらいで、その他は早いうちに姿を消したのは残念だったが、短期間とはいえ若者たちで賑わう通りはいいものだ。不思議なもので、高校生のスポーツ全てが高体連に参加しているわけではなく、さらに高体連参加競技であってもインターハイに加わっていないものもある。最近注目されている女子サッカーはその代表だ。おそらく来年にはインターハイ種目になるのではとふんでいるのだが。 この会報に能代市のことを書くのも変な話だが、今年の能代市民は高校スポーツに一喜一憂したことだろう。何しろ「バスケの街」だ。インターハイ男子バスケの会場は決まり事のように能代市で、応援に出かけた市民も多かったことだろう。しかしその誇りとする能代工業は、地元開催にもかかわらず2戦目で福岡第一高校にダブルスコア近い点差で惨敗してしまったのである。能代工業全盛の頃と違って、見上げるばかりの留学生を含めた強豪校に勝つことはずいぶん難しくなってきているが、更なる高さへの挑戦が続くに違いない。気落ちしたであろう市民に歓喜をもたらしたのが、地元である能代山本地区出身者だけで構成された市立高校のチームである。全国では、県代表といっても他県からの入学生がほとんどのチームもあると聞く。 正直、組み合わせが決まったときは今年も無理かなとも思った。外来で試合の時間帯に診察した患者さんは皆、普段より脈が少し速いような気もしたが、それは私自身が思いの外、試合経過を気にしていたせいなのかもしれない。
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