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<春夏秋冬>

発行日2010/03/10
秋田組合総合病院  木村 愛彦
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ある日のこと
 
 アメリカに行ったとき、人々のマナーの良さに感心したことがある。まあ、向こうでは、銀行に行っても、役所に行っても、空港のチェックイン、はたまたハンバーガー1個買うにしてもどこでも行列である。向こうの人の仕事ぶりは実にのんびりしていて、窓口の向こうで、でっかいマグカップに入れたコーヒーなど飲みながらゆっくりと一人一人処理していく。愛想もゼロである。しかしそれを待つ人々は慣れているのか、文句など誰も言わず「ネークスト!」と呼ばれるまでおとなしく列に並んで待っている。おそらく病院でも「自分の順番はまだか!?」とか言っていきなり入ってくる患者さんなどもいないであろう。また、電車やバスの中でも、例えばケイタイで大声で話している人などは皆無だし、高齢者や子供連れの場合は必ず誰かが席を譲ってくれる(治安の悪い地域などは別であろうが)。それも、耳鼻に無数のピアス、手足にはタットゥーだらけのどう見てもヤクかなんかやっているようにしか見えない若者ですらそうである。子供を抱っこして乗車した時にはどんなに混んでいても座れなかったことは一度もなかった。アメリカ人の性格が皆温厚で人柄が良い、というわけではなく、周囲の環境そして子供の頃からの教育により、自然に身に付いている所作なのであろう。そう、みんなきっちりルールを守っているのである。これは見習いたいモノだと思った。
 さて、年が明け2010年のある日、テレビの全国ニュースで所謂「荒れる成人式」のトップを飾ったのはな、なんと秋田市の成人式であった。毎年のニュースで「やれやれ、今年もか」と見飽きた感もあったが、私の記憶では秋田では初めてであり、少なからず驚き、秋田県人として恥ずかしさを感じざるを得なかった。そして、最近その張本人たちが逮捕され、実名入りで報道されていた。「前途ある若者たちには寛大な処分を」との秋田市長のコメントも報じられた。「厳罰に処せよ」とは言わないが、海外では、要人暗殺未遂の現行犯あるいはテロ行為としてその場で射殺されてもおかしくはないもので、格好良くもなんでもなく、ひたすら恥ずべき行為だということは十分に認識してもらいたい。「何でもいいから目立つことがしたい」「世間に注目されたい」ことがきっかけならば、それは、東京の電気街での無差別殺傷事件の犯人の心理と何ら変わることはない。大人の社会では、われわれの仕事もそうであるが、一つのミスや出来心がそれからの一生を暗くしてしまうことがいくらでもある。同じく荒れる成人式があった佐世保市長は「社会は厳しいもの。ルールを守ることを十分認識してほしい」と若者たちを一喝した。全く同感である。

 
 春夏秋冬 <ある日のこと> から