今年('02)は雪が少なかった。1月の日曜日にキサカタ方面にドライブした時、鳥海山を写真に撮ろうと足元を見ずに歩道から車道に左足を踏み外した。意外に高い段差で、衝撃は強かった。股関節のあたりにヒビが入ったのじゃないかと心配になるほどだった。けれども何ほどのこともなく車に乗って帰宅した。 次の日曜はスガカネゴルフで練習。 その次の日曜(2月3日)に又もキサカタ方面にドライブ。どうも魔がさしたようだ。「道の駅」で安くて新鮮な魚を買って帰り、3時頃昼夕兼ねた食事。アルコールを多めに飲んで居間の長椅子で寝る。 腰痛に気付き本格的に寝室で寝る。夜半、目覚めると腰が磐石の重苦しさ。万力で締めつけられたことはないが、まあそんな形容をしたい状態。激しい口渇を感じて、中腰のまま台所に行き、わずかに腰を伸ばした時、ギクリと来た。それから左座骨神経痛。もう痛くて眠れない。 仰向けもダメ。左を向いても右を向いても痛い。 居間に移って椅子に座ると、なんとかしのげる。冬のオリンピックの生中継をやっているので、それを観ながらウツラウツうして朝を迎える。 2月6日、日赤整形外科を受診。Y先生の説明を聞く。診断は椎間板ヘルニヤ、保存療法で経過を見る。3週間ほどで軽快する可能性ありと。 なるほど、それからずんずん痛みは軽くなり、3週目には殆ど普通になった。 それにしても、私は左半身に故障が多い。近視は左が強いし、白内障の手術もした。鼻のムズムズするのも左だし、歯も左が先にやられた。 声帯のポリープも左だった。アッペはさすがに右だったが、胸部の帯状庖疹は左だった。左手がしびれた時は、後縦靱帯骨化症というモノモノしい診断をつけられた。偶然かもしれないが、なにか理由があるのかもしれない。 2月23日、久しぶりに車に乗り近くのスーパーに行く。スーパーのなかを歩くと左脚が少し痛い。 2月24日、やはり車を運転して市内の親戚の家に行く。 2月25日、再び左下肢痛に襲われる。今度は椅子に座っても痛い。 車の運転はどうやら椎間板ヘルニヤには良くないようだ。せっかく引っ込み始めたヘルニヤが再びにゆるりと出張ったらしい。痛みは本人しか分からないが、とにかく生まれて初めて経験する痛みである。痛みは動物にとって一種の防御反応だが、こう痛くっちゃあ寿命が縮まる。神サマ、ホトケ様、オタスケクダサイと思わず祈りたくなるが、おや俺は、神もホトケもあるものか、という無信仰者だったと気づいてヤメにする。 耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで、うめいてみる。うめくと少し痛みがまぎれる。声を出して泣いてもいくらか効果がある。大きな声で泣けばもっといいかもしれないが、近所の手前そうもゆかぬ。 ヒイヒイとしのび声で泣く。泣いている自分が哀れになって又泣く。 これはたまらぬと日赤病院に頼んで入院させてもらうことにする。 3月1日入院(金)3月4日(月)OPの予定となる。 個室は特等しか空いてない、差額は一日○万円だという。私はこの病院のOBだから少しはマケてくれるかもしれない、と思ったが、、、 院長と副院長が見舞いに来てくれる。まさか差額のお礼じゃあるまいが。若い頃は、教授や院長は雲の上の人だったが、今や私のほうが年上になってしまった。「近頃は、患者さんを患者様と云うようだけど、なんだか媚びてるような感じでちょっとイヤですね」と院長に云ったら、温厚なこの人はニコニコしてうなずいていたが何も云わなかった。 手術前の検査をいろいろ受けて、3月4日午後3時半の予定だったのに、交通事故の飛び入りがあり、遅れて6時、ベッドのまま手術室に連れてゆかれる。手術台に移されて、静脈麻酔でストンと意識消失。暗黒無明の世界で何をどうされたか全く分からぬ。このまま覚醒しなければこの世からサイナラしているのも気付かないでいたはずだが、現実は2時間後ムリヤリ起こされた感じで目を覚ます。瞬間、気味の悪い夢を見たようだったがすぐ忘れた。 直後から、尿道口に非常な痛みを感じた。導尿のカテーテルが入っているのである。神経痛とは違った灼熱感と排尿したいのに出せない苛立ち。苦しみが怒りに変わって、看護婦に「Y先生に連絡して、はずしてくれ」と頼んだが、彼女はとりあわず、なだめながら鎮痛剤を注射した。
眠ってしまった。 朝になって目覚めると、尿道口の痛みはないし、左下肢の痛みも消失していた。 HCUという部屋、昨日の交通事故の患者が入っているらしく、部屋全体の空気ば慌ただしい。あわただしいなかで、私のところにも来て、体温を見たり血圧を測ったりする。いかにも甲斐甲斐しいという感じだ。
カテーテルを抜いてくれたが、一緒に尿も漏れて恥ずかしかった。 汗ばんだ身体を拭いてくれたが、照れ臭くてかえって汗が出る。 10時半頃、病室に帰った。 コルセットをつけて、だんだんに歩行練習を重ね、Y先生の許可を得て、3月16日退院した。
8月末、ゴルフコンペに参加。 教訓老人は足元に注意。 蛇足痛い時は、うめくか、泣くといい。
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