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<ペンリレー>

発行日2022/08/10
秋田厚生医療センター  香曽我部 杜雄
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Jazz持論
 
 秋田厚生医療センター研修医1年目の香曽我部杜雄と申します。このたび同院の研修医の先輩である照井幹司先生よりご紹介いただきました。
 私は大学時代Jazz研究会に所属していました。学生実習中先生方に部活を聞かれ、同期が陸上、バドミントン、バスケなど、華々しい部活を答える中、Jazz研と答え微妙な顔をされてしまう部活です。部員数は少なく、学年同期もおらずただ一人でした。音楽系サークルの中でも印象は薄く、「軽音だっけ?」「室内合奏?」などと部員数が多い他部活と勘違いされることもしばしばです。
 なぜこんなにも印象が薄く、敬遠されてしまうのか。一般の人にイメージを聞くと「よくわからない」「難しそう」「適当でしょ?」といろいろな答えが返ってきます。確かにJazzはとても難しい音楽です。Jazz研には中学、高校などで楽器を経験して、大学入学後も演奏を続けたいと考えている方が、初めは大勢入部してくれます。しかしほとんどの人がJazzの難しさにプライドを打ち砕かれ、すぐに離れてしまいます。かくいう私も中学から吹奏楽を続けていて、入部当初に理想を砕かれた一人です。それゆえ演奏することの楽しさを理解させてあげられないまま、部員は少なくなっていきました。
 なぜJazzはそんなにも難しいとされるのか、それはJazzの懐の大きさにあります。世間一般的な普通の音楽、吹奏楽などで演奏される曲には、最初から最後まで楽譜があります。楽譜の通りに演奏し、技術を高める音楽です。一方Jazzの楽譜には最低限のメロディーとコードがあるのみで、その曲をどういう楽器構成で、どんなリズムで、どんなテンポで、どれくらいの長さで演奏するのかは演奏者にゆだねられます。次に決定的に違うのは曲途中のad-lib、いわゆる各演奏者のソロが曲間にあることでしょう。これは決められたコードに従いつつ演奏者が自由にフレーズを作るという即興演奏のことです。これが確かに難しい。今まで音楽は楽譜通りに演奏するものとしてきた音楽人はここでくじけます(くじけました)。これが何をしているかわからない、自由な音楽と言われる根源でしょう。
 しかしJazzは完全に自由な音楽ではありません。自由とは制限がないことです。何も制限がない音楽は音楽とはいえないでしょう。Jazzは他の音楽と比べ制限が少ない(ここでいう制限とは楽譜なり構成なりメロディーなりテンポなりといったもの)からこそ「自由度が高い」音楽です。自由度が高いからこそ、セッションなどでメンバーを選ばず、ほんの少しの打ち合わせで好きな曲を即興演奏できてしまうのがJazzの最大の魅力です。制限が多いことは負の反面もありますが、考えることが少なくて済むということでもあります。現代の人間は自由といわれたほうが、もしかしたら難しいことが多いのかもしれません。
 Jazzは死んだ音楽でしょうか。否、すべての音楽に応用でき、根元となれるのがJazzのいいところです。音楽がある以上、Jazzは死なないでしょう。また、私は音楽は言語のひとつだと考えています。極論をいえば海外などの知らない土地で、楽器一つで現地の人と会話をできてしまうのがJazzという音楽です。ここまで文章を読んでくれた人が、Jazzをよくわからないけどかっこよさそうだな、くらいに思っていただければ幸いです。
 長文・駄文を失礼いたしました。次回は秋田厚生医療センターの1年目研修同期で、秋田高校同期の服部苑子先生にバトンをお願いしました。よろしくお願いします。
 
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