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<ペンリレー>

発行日2022/06/10
熊谷内科医院  熊谷 肇
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テスラ快走
 
 小泉達朗先生からバトンを渡されました。オープンカー、いいですよね。私も大好きです。知り合いの車屋さんに安く出せるスーパーセブン、ありますけどいかがですか。で、今回は去年買ったテスラの話。

 かねがね次のクルマは電気自動車にしようと思っていた。
 2021年3月中旬、晩酌の助けを借り、ネットでテスラモデル3ロングレンジをポチった。テスラに販売店はなく注文はネットのみ。納車は6月初め、川崎駅前のショッピングモールに入っているテスラのショールームでと決まった。有料で宅配も頼めるが、ドライブがてら取りにいくことにした。

 6月、午後休診の木曜、診療を終え新幹線で川崎に向かった。飛行機はコロナ禍で欠航だった。夕方に到着し納車に訪れた旨を告げると、駐車場に置いてあるから乗って行けと言われた。広大な屋内駐車場の一角に並べられた、数十台のテスラモデル3の中から、おそらく唯一だろう秋田ナンバーを探し出した。予習はしてきたが、実際には見るのも乗るのも初めてだ。事前にリンクしたスマホを持って近づくと自動で開錠、メーター類は一切なく、中央に大きな液晶ディスプレイがあるだけのSF的な内装。シートに座りブレーキペダルを踏むとシステムが起動した。コクピットドリルを兼ねてしばらくあちこちいじりまわしてから、ベンツと同じ右コラムから生えたシフトレバーを前進に入れて走り出す。大通りに出た。ディスプレイに周囲の交通が歩行者、自転車、乗用車、トラックなど、アニメーションで表示される。テスラは常時たくさんのカメラとセンサーで周囲をくまなく監視し認識している。クルマが危険と判断すると、自動でブレーキをかけたり、ハンドルを切って避けたりする。

 電気自動車なのだから静かでスムーズなのは当然だが、アクセルペダルとクルマの動きが直結している。走り始めから、まるでパワーバンドに乗った2サイクルエンジンのごときツキの良さ。気持ちがいい。首都高速道路の料金所をくぐり、アクセルペダルを深く踏み込んでみた。とたんに始まる怒涛の加速。息が詰まる。音の高まりも振動もなく前方に吸い込まれていく。本線への流入ランプでハンドルを切ると、ほとんどロールせず食い込むように曲がる。操作に対する反応がとにかくダイレクトで素早く、重たいエンジンを鼻先にぶらさげた従来のクルマとはまったく違う動きをする。加速はポルシェ、ハンドリングはフェラーリと表現した自動車評論家がいた。

 家路を目指し東北道に入り、運転にだいぶ慣れたところで有名な自動運転機能のオートパイロットを試してみた。専用のスイッチはなく、走行中にシフトレバーを下に2回倒すと作動する。アメリカでは試験的ながら完全自動運転機能が提供されているが、日本国内ではレーンキープアシストとアダプティブクルーズコントロールのみに機能制限されている。今どき珍しくもない機能だが、その安定感がすごい。車線の中央をどっしりと走り、カーブもふらつくことなく曲がっていく。前車に追いつくと自動で減速、停車し、前車が発進すると再発進する。とても自然かつ安心できる挙動で、ずっと任せていられる。

 川崎市から秋田市までおよそ650㎞、テスラモデル3ロングレンジの航続距離は580㎞だから途中で充電しなければならない。充電には3つの方法がある。1つ目は自宅に設置した充電器。残量20%から満充電まで約6時間かかる。2つ目は日産ディーラーや高速道路のサービスエリアなどに設置されているチャデモ充電器。30分間で150㎞分ほど充電できる。3つ目はテスラ専用充電器のスーパーチャージャー。30分間でおよそ400㎞分を充電でき現状で最高の出力を誇る。世界で2500カ所以上、日本国内に現在47カ所あり、なおも増え続けている。テスラモデル3は2021年に世界で93万台を販売したが、クルマの魅力だけでなく圧倒的な充電能力を持つスーパーチャージャー網によるところが大きい。

 秋田までの帰路、佐野と仙台のスーパーチャージャーで休憩を兼ねて充電した。カードなどによる手続きの操作はなく、ただ充電コネクタをクルマの充電ポートに近づけると自動でフタが開く。そのまま差し込むと充電が始まり、料金はクルマに紐付けられたクレジットカードから引き落とされる。充電が終了してもコネクタを刺し込んだままにしておくと、さっさと譲れと割高な超過料金がとられる。チャデモ充電器では充電終了後の放置が大きな問題になっている。帰ってからは主に自宅充電、県外に出るような遠出は盛岡と山形にあるスーパーチャージャー、出先で間に合わないときはイオンやサービスエリアのチャデモ充電器を使うこともある。電池容量が大きいため、電欠を心配したことはない。不自由なく毎日走らせている。冬場もヒートポンプ暖房ですぐに温まり、特に困ることはなかった。

 充電中の暇つぶしに、テスラはエンタテインメントのための機能を満載している。ネットに常時接続しており、ブラウジングはもちろんユーチューブやアマゾンプライム、ネットフリックスなどの動画を見られる。ラジオはネット経由で世界中の放送が登録されている。アフリカや中東のラジオが聞けるのは驚いた。ゲームもたくさんある。パズル系やRPGに加え、アクション系ではカーレースのゲームもあって、なんと自前の、運転席のハンドルとペダルで操作する。音響は標準で14個のスピーカーとサブウーファー。かなり良い音だと思う。

 テスラには定期的にスマホやパソコンのような、ネットからのソフトウェアアップデートがあり、無料で既存の機能が改善されたり新しい機能が追加されたりする。回生ブレーキの効きが、当初同乗者が酔うのではないかと心配するくらい強かったが、アップデートで穏やかになった。アップデートのたびにオートパイロットが進化している。カーブでの減速や曲がり方がずいぶん滑らかになった。他にもセンターディスプレイの表示がわかりやすく改善された。サウンドの設定が細かくできるようになった。新しいゲームが追加された。テスラは購入後も常に最新の状態が保たれる。

 他にも、テスラならではの機能は書ききれないほどある。これまでのクルマはガラケーで、テスラはスマホだなどと言われるが、確かに新たなコモディティとしての大きな力を感じる。これほどの新しい経験と感動は、テスラに出会わなければ得られなかった。誰にでも勧められるクルマではないが、クルマ好きなら一度乗ってみて欲しい。

 次回は悪友、元町形成外科、橋田直久先生にバトンをお渡しします。コンピュータ、特にネットワーク技術では、いつも助けられています。交友関係が広い先生のこと、思いもよらない話が読めるかも。
 
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