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<ペンリレー>

発行日2022/03/10
すずきクリニック  鈴木 裕之
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海外移住計画
 
 私は現在65才。男性の平均寿命が81.64才(2020年、厚生労働省発表)であることを考えると私に残された時間はあと15年余ということになる。この15年を仕事だけで過ごし、そのまま一生を終えるわけにはいかないと思っている。もちろん仕事をおろそかにするつもりはないが、どうせ死ぬならそれまでにやりたいことをやりきってからあの世とやらに行きたい。では何をやるか? それは海外移住である。
 私の叔父がフルブライト留学生としてアメリカに留学し、日本に帰国した際、親戚一同で羽田空港に出迎えた。当時、私は中学生、海外留学の意味などろくにわかっていなかったが、日本に帰ってきた叔父の笑顔と達成感に満ちた表情が私の胸に焼き付けられた。将来どんな職業に就こうとも自分も海外留学するという決意がそこで固まった。それから約20年後、医師になって10年目に私に留学の許可が下りた。私が所属していた秋田大学医学部第二外科(当時)では海外留学経験者はおらず、海外文献から著名な科学者に34通のapply letterを書いた。幸運にもアメリカ合衆国メリーランド大学医学部消化器病部門が実績のない私を唯一受け入れてくれ、2年間の海外留学を経験した。留学中は「Jap!」と呼ばれたり「Who are you!」と罵られたりもした。そして満足のいくデータが出ずに失意に暮れた日々もあった。しかし、この2年間は私にとっては実質10年以上に相当するとても価値ある2年間であった。科学的知見を得、実験手技を学び、臨床の現場を経験できたことはもちろんだが、アメリカ社会の生活感(人々の考え方、人種差別、格差社会等)を実感できたことが大きい。実際に生活しながら異文化に触れることに快感を覚えたのである。
 そして、あれから30年近くがたった今、私は“2回目の海外留学=海外移住”を目論んでいる。開業医を引退したら、妻と共に海外に移住する計画である。移住先は未定ながら、候補はかなり絞られた。とにかくもう一度、異国の地で現地の人とコミュニケーションし、自らの足で歩いて、自らの肌でその国を感じるという快感ゾーンに浸りたいと考えている。
海外移住に備えてやるべきリストがある。
1.英語力増強:現地でのコミュニケーションに必須である。毎日20分の英会話講座の視聴は6年目に入った。外国人との英語での診療も冷や汗をかきながら行っている。
2.体力維持:体力がなければ海外渡航できない。毎朝30分のウォーキングと1日12,000歩の歩数確保を継続中。
3.認知力保持:認知力も低下させるわけにはいかない。講演活動(漫談家としての活動も含む)、ピアノレッスン受講、ブログ発信等を続けていく。
4.趣味・教養の充実:現地でのコミュニケーションに有用と考え、写真・音楽・天文・デジタル分野の素養を身につけていく。
5.対外活動の休止:産業医などの対外的活動を休止あるいは退任する。
6.医院継承:廃院でもいいが、職員のことを考えると継承してもらったほうがいいだろう。
7.新拠点の探索:海外移住とはいえ日本には拠点が必要なので成田空港近郊に国内拠点を設ける予定。
越えなければならない壁は1回目の海外留学よりかなり高い。しかし、あと5年後という目標設定なら何とかなりそうな気がする。もうスイッチが入ってしまった。やるしかない。
 次回は外科医として、秋田・たばこ問題を考える会会員としての先輩、添野武彦先生に襷を渡します。

 
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