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<ペンリレー>

発行日2021/05/10
市立秋田総合病院  若林 俊樹
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逆転の発想
 
 私は今年で44歳になりますが、晩婚であったため子供はまだ小さく4歳と2歳の男の子です。子育ては楽しいながらも大変です。また学ぶところもたくさんあります。妻も外科系医師であるので、帰宅が遅くなり子供の世話を私だけでしなくてはならないことがあります。そのなかで、食事、お風呂というのはやや難易度が高いと感じます。自分だけでこどもの面倒をみなくてはいけない日は少し不安です。2人の相手をしながら食事を作り、食べさせながら自分も食べるといったスキルはまだないので、妻が作りおきしてくれたものや、できあいのものを食べさせます。もちろん、自分の食事は後回しになります。
 それから風呂になるわけですが、風呂も大変です。一度に3人で入りますが、子供の体をまず洗い湯舟に入れた後、自分の体を洗います。自分の体を洗い終わったころには、子供たちは風呂から出たいと騒ぎます。ゆっくり湯舟につかったりできませんし、もちろん一日の疲れを癒すこともできません。
 お風呂から出たあとは、子供たちは興奮して体も拭かずに走りまわります。体を拭こうとバスタオルをもって私は追いかけますが、なかなかうまくいきません。裸で延々と3人で走りまわる羽目になります。
 しかし、私はあるとき気が付いたのです。追いかけまわすから逃げるのではないかと。恋愛上級者はこういった心理を利用し駆け引きをしているといいます。『北風と太陽』のように逆転の発想が必要なのではと。
 そこで私は追いかけるのをやめ「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ」と声を張り上げました。「いらっしゃいませ、こちらは体拭き屋さんです。きれいに拭きますよ。」いつもと違う感じに子供たちはこちらをうかがっています。興味はありそうですが、まだ、こちらに来てくれる様子はありません。そこでダメ押しのように「今日は特別にパジャマも着せますよ」。今日は特別、あなただけ特別といった言葉には子供から大人まで弱いようです。この言葉を聞き、長男がこちらにやってきて素直に体を拭かせてくれました。こうなるともうしめたものです。客が客を呼ぶように、行列があるから店に行くように労せずに次男がやってきます。こうして、私は裸で走り回らなくてもよくなったのです。
 この作戦にはもう一ついいことがあります。何屋さんにもなることができるのです。「トイレ屋さん」「はみがき屋さん」簡単になんにでもなれます。そして、あなただけの特別感を出してあげればよいのです。
 この文章を書いていて、さらに私は気が付きました。この逆転の発想は外科への勧誘にも使えるのではないかと。外科に来てほしいとアピールするよりも、自ら希望し行列を作るように外科医が増えたら最高です。秋田県の外科医不足も簡単に解決できそうです。外科に来てほしいというかわりに逆に・・・・逆になんて言えばいいのでしょう・・・・ちょっと思いつきませんが・・・。
「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ こちらは消化器外科です・・・。」

 次は、長野高校時代の同級生でもあり、現在も患者さんの紹介、相談などでお世話になっている秋田厚生医療センター 消化器内科の小林芳生先生にお願いしました。
 
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