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<ペンリレー>

発行日2021/03/10
市立秋田総合病院  藤原 敏弥
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ルアーフィッシング
 
 立木先生、ペンリレーのバトンありがとうございます。立木先生は大学の同期生で、Y先生とともに親しくお付き合いさせていただいております。お二人はストイックな自転車競技にはまっているようですが、私は体力的に無理があり参戦できずにおります。運動といえば、一向に上手くならないゴルフが精一杯です。
 さてペンリレーですが、子供のころからの趣味である釣りについて、特に大好きなルアーフィッシングについて書くことにします。田舎に育った私は、物心ついたころから近くの川へ毎日のように釣りに出かけました。当時はミミズや川虫を使うエサ釣りで、ウグイやイワナを釣っていました。大きな魚を釣っては祖母に褒められるのがうれしくて、中学までは本当によく釣りをしていました。高校に入り親元を離れてからは、暫く釣りから離れていました。
 時は経ち医師になって二年目、大館の秋田労災病院に赴任しました。病院の真ん前を東北有数の大河、米代川が流れています。雑誌でその米代川にサクラマスが遡上することを知り、釣りキチの血が騒ぎ出し、居ても立っても居られず10年ぶりに釣りを再開しました。サクラマスは全長60㎝のサケ科の魚で、釣り人にとっては憧れの魚です。サケのように数年間海で生活し、産卵のために遡上してくるのですが、川に入ってからはエサを食べないため、エサでは釣ることができません。そこでルアーの登場です。ルアーとは、小魚や虫に似せた偽物のエサ(疑似餌)のことです。サクラマスを釣る方法はルアーフィッシングしかないのです。そこで当時にしては高級な竿と専用のアブガルシア製リールを購入し、ルアーを準備しました。いざサクラマス釣りに挑戦です。
 実は中学時代にもルアーフィッシングをかじったことがあります。当時流行った釣りキチ三平という漫画に感化され、見様見真似でやってはみたものの、全く釣れずに諦めました。当時使ったルアーはスプーンという種類で、まさに洋食のスプーンの形そのままの金属製ルアーでした。金属の塊で魚が釣れるわけがない、というのが素直な感想でした。
 米代川の川べりに立ち、そんな釣れなかったルアーフィッシングの記憶が頭をよぎります。それでもサクラマスを釣りあげたいという強い情熱が、勝手に私の腕を動かし、ルアーをひたすらキャストします。サクラマス用のルアーは10㎝程の長さで、小魚を模した形をしています。川の流れに合わせてルアーを生きた魚のように泳がせて、サクラマスが食いつくのを待ちます。しばらくして、竿先にゴミが引っ掛かったような違和感がありました。きたか!と思いリールを巻いてルアーを回収すると、なんと魚が釣れています。人生初のルアーでの釣果です。果たしてその魚とは? 幻の60㎝級サクラマス? 残念ながら違いました。その正体は、わずか5㎝のちびヤマメでした。小さなヤマメが、自分よりも大きなルアーをしっかりと咥えて、きょとんとした表情でこちらを見ています。自分の倍もある大きなルアーに食らいつくヤマメの習性に面食らいましたが、ルアーで魚が釣れる、小さな魚もルアーで釣れるという事実は衝撃でした。この時から、私はすっかりルアーフィッシングの虜になりました。それ以来、ルアーであらゆる釣りに挑戦しています。狙う魚は、川ではイワナ、ヤマメ、サクラマス、海ではアジ、スズキ、イナダ、さらにはアオリイカ、タコなど、数え上げればきりがありません。ただサクラマス釣りは本当に難しく、大館にいる間はおろか、その後十数年を経て雄物川でやっと釣りあげることになります。
 さてルアーフィッシングの中で私が最も愛するのは、なんといっても渓流でのイワナ釣りです。雪解け水が落ち着いた6月頃が渓流釣りのハイシーズンになります。その頃毎年玉川温泉近くの大深沢という渓流に行きます。そこは玉川温泉入口から林道を一時間ほど車で進み、さらに車を降りて一時間以上歩かねばならない秘境なのですが、場荒れしにくいため、大きなイワナが良く釣れます。新緑の木々の中、きれいな渓流に立ち、川のせせらぎを聞きながら釣りに没頭するのは、えも言われぬ楽しさです。ここぞというポイントをめがけてルアーをキャストし思い通りにルアーを引いてくると、突然岩陰からイワナが黒い影となって飛び出し、猛然とルアーを追い始めます。そのイワナがルアーに食らいつく瞬間は、釣り人にとってまさに至福の時です。日常の煩わしいことは全て忘れて、本当にリフレッシュできます。
 残念ながら5年ほど前に熊の出没が相次ぎ死者も出て、お気に入りの渓流近辺は入山禁止になってしまいました。毎年イワナと命、どっちが大事か悩みながら、ここ5年は入山自粛しています。いつか熊騒ぎが落ち着いたら、またあの場所へ行きたいと思います。
趣味の話に最後までお付き合いいただきありがとうございました。釣りに興味のある方は、ぜひ一声かけてください。秘密の穴場をご案内いたします。
 次回のペンリレーは、私がいくら練習してもかなわないゴルフの名手、当院消化器外科の若林俊樹先生に引き継ぎたいと思います。若林先生、よろしくお願いします。
 
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