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<ペンリレー>

発行日2020/03/10
外旭川病院  北原 栄
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グラム染色ノススメ
 
  2018年に秋田県感染対策協議会が、内閣官房から表彰されたのをご存知でしょうか。実は「第2回AMR対策普及啓発活動 国民啓発会議議長賞」という賞をもらっています(AMRとは薬剤耐性のことです)。快挙です。詳しくはQRコードからいける記事を読んでいただければと思います。記事の中でも触れられていますが、秋田県感染対策協議会は2014年からグラム染色研修会を開催しています。私は記念すべき第1回に参加し、第2回からは呼吸器検体のインストラクターをしています。さらなる普及を目指して、今回はグラム染色について述べたいと思います。ちなみに申告すべき利益相反はありません。
  1884年にデンマーク人の細菌学者であるハンス・グラムによって、グラム染色は発明されました。このようにグラム染色は昔からありましたが、学生時代の講義で扱われた記憶はなく(私が講義をサボったためだったら申し訳ありません)、初期研修の時に知りました。研修医にとってのバイブルである、青木眞先生の『レジデントのための感染症診療マニュアル(医学書院)』でグラム染色の重要性が説かれていたのです。興味を持った私は指導医から許可をもらい、呼吸器内科をローテイトしていた時に細菌検査室にも行くことになりました。そこでグラム染色や細菌培養の実際を、臨床検査技師さんから教わりました。とはいえ当時は初期研修医であり、グラム染色を臨床に活かしていくには力不足でした。
 初期研修後は呼吸器内科医となり、初期研修とは別の総合病院に勤務するようになりました。そこでもグラム染色を使いこなすまでには至りませんでした。検体を採った後に抗菌薬を投与して、それから細菌検査室で染色された検体をみていました。すでに投与している抗菌薬が妥当であったかを判断する、という今から思うともったいないグラム染色の使い方をしていました。
  その後、細菌検査が外注である病院に勤務するようになり、グラム染色の重要性を痛感するようになりました。培養結果が出るまでタイムラグが生じるため、最初に投与する抗菌薬を、グラム染色を元に根拠をもって選択する必要性が出てきたからです。現勤務先も細菌検査は外注です。私は療養病棟を担当していますが、入院患者の発熱の原因として肺炎や尿路感染症が多くなっています。ほとんどは基礎疾患を持つ高齢者であり、感染症は命にかかわります。だからといって広域抗菌薬ばかりを投与していると、今度は偽膜性腸炎(最近はクロストリジウム・ディフィシル感染症と言うようになりました)を発症してしまいます。そこでグラム染色です。グラム陽性か陰性か、球菌か桿菌か、大きいか小さいか、連鎖か塊か、などで菌種を絞ることができ、狭域抗菌薬で治療を始めることができます。一例として、当院の某ドクターが膀胱炎になったときの尿を染めた写真を載せました。連鎖状のグラム陽性球菌が見えます(カラー写真ではないので色はわかりませんが)。検体は尿なので腸球菌だとわかり、その多くはEnterococcus faecalisなのでペニシリン系抗菌薬が効きます。ということで、この時はサワシリンを処方しました。ちなみにこの写真は、顕微鏡に天体望遠鏡用のアタッチメントを装着してiPhoneで撮影しました。もう一つの写真で、私の隣にその顕微鏡が写っています。
 グラム染色は、顕微鏡、染色液、水回り、スライドガラスなどがあればすぐに始められます。軽い気持ちで始めてみてはいかがでしょうか。その際に参考にする書籍としては、題名に「グラム染色」とあるものではなく、まずは『感染症レジデントマニュアル(医学書院)』のカラーページが良いと思います。書籍だけではちょっと、という方にはグラム染色研修会があります。今年は夏に開催する予定です。皆様にお会いできるのを楽しみにしています。
  次のペンリレーは、私が秋田赤十字病院呼吸器内科で勤務していた際に、初期研修医としてローテイトした秋田赤十字病院呼吸器外科の齋藤芳太郎先生にお願いしました。
 
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