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<ペンリレー>

発行日2019/07/10
さが医院  嵯峨 大介
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自己満足もリサイクル
 
  東日本大震災から8年が経過しました。勤務医時代の貯金と銀行からの借り入れでようやく建てた医院が壊れてしまうかという激しい揺れでした。直後から秋田火力発電所が緊急停止したため、停電状態となりました。幸い患者さんの透析治療は概ね終了しており、当日は大きな障害もなく終了しました。しかし、電気の復旧の目途は立たず、翌日の透析を行うことができないと判断しました。当時、父が勤務していた秋田赤十字病院に連絡をして受け入れを承諾してもらい、患者さんへの連絡に奔走しました。案の定、翌日になっても停電は解消されず、スタッフとともに患者さんの透析治療をしてもらうために同院に出向きました。夕方遅くになり中通地区の電気が復旧しました。機械室や透析室の状態の確認をして安堵したことを記憶しております。その後も、無計画な計画停電のために、自院での透析医療の継続を脅かされる状況が続きました。電気に依存している透析治療を再認識し、非常用電源設備の必要性を実感しました。そんな折、「秋田県人工透析医療機関発電設備整備事業費補助金」の募集が開始され、すぐさま飛びつきました。最大30床の透析監視装置や透析液供給装置、水処理設備、エレベータ等を同時に稼働できる電気量を計算してもらいました。単相100Vで55kw、三相200Vで70kwと算出され、必要電流はそれぞれ550Aと250Aを想定しました。当院の透析は月水金曜日と火木土曜日のグループに分かれており、両グループ1回ずつの合計2日間をまかなえる燃料タンクを装備している機種に限定しました。2日間としたのは、どんな状況に陥っても自力で1回分の透析を準備できる状況を作りたかったからです。壊滅的な被害を受けて透析継続が不可能と判断したなら、速やかに透析条件等の診療情報提供書を作成して災害拠点病院に依頼をする必要があります。透析1回分の時間があれば、状況判断に余裕が持て、その後の戦略も立てやすくなります。上記の条件を満たしていたのが、AIRMAN社製のSDG220S-3A6でした。排気量12Lの三菱製ディーゼルエンジンを搭載して、400Lの燃料タンクを有します。音圧レベルは65dBに抑えられ、稼働音も気にならないレベルです。また、既製品は目に突き刺さるようなライトブルー塗装でしたが、景観を考慮して白を基調とした落ち着いたオフホワイト塗装に変更してもらいました。工事請負業者である山二システムサービス(株)が年1回の定期点検も請け負ってくれております。11月を過ぎて気温が下がり、3号軽油に切り替わる時期に点検作業の連絡がきます。発電機の動作確認とともに、燃料(軽油)の入れ替え作業を行います。通常は廃棄処分されてしまう廃油を一時貯蔵して有事の際に再利用できるように、隣に屋外用ホームタンクを設置しました。下部にはガンホースを設置して、自家発電装置の給油口に届くようにしました。また、同社と「災害時における石油類燃料の優先供給」契約を締結してもらい、より強固な電源確保が可能になっています。
  翌平成24年度は記録的な大雪に見舞われました。当院駐車場や敷地内にも大量の雪が降り積もりました。開院当初から吉鉄製の鋼のスノーダンプを使用して人力で除雪を行っておりました。スノーダンプは豪雪地区の新潟妙高が生んだ鉄製パイプ完全溶接の強固なつくりをした一品ですが、いかんせん筆者は非力でありますので、降り積もった雪を駐車場の端に寄せて圧迫して固めるのが精一杯です。膝位の高さで雪の塊が徐々に駐車場を狭めていきます。スロープを作り、駐車場の端の雪の塊の上に積み重ねることにしました。50cm程貯まると切り込みを入れて、キューブ状態に切り崩して、スノーダンプを滑らせて輸送します。30台程の駐車場を毎朝2時間くらい除雪しておりました。積み重ね作業は日曜日などの時間のある時に行い、汗だくになって半日程度かかっておりました。当時は日々の診療よりも雪寄せ計画が頭の中の大部分を占めていたと思います。最終的に4段から5段位積み上げて、高さ2m弱になったと思います。やっと春が来た頃に体力の限界を痛感しました。ホイールローダーの購入を決意して、「小型車輛系建設機械」特別教育を受けて作業資格を得ました。コマツ社製WA30-6ミニホイールローダーです。総排気量1642ccコマツ3D88Eのディーゼルエンジンを搭載するため、ホームタンクからの軽油を燃料として利用することができます。翌年からは降雪量が減った影響もありますが、除雪時間が大幅に短縮され、雪寄せへのストレスが軽減しました。慣れないホイールローダー運転のため、 色々な壁や道路に傷をつけながらの作業になりましたが、徐々に除雪技術が向上していきました。毎朝30分~1時間ほどをかけて、駐車場と池永小路を中心とした周辺道路の雪寄せをして、駐車場の端に積み上げます。冬期間は週に3日くらい出動しますが、ホームタンクの軽油はなかなか減りません。折角の廃油リサイクルシステムが破綻してしまうと考え、8年ほど乗り続けてきた愛車を乗り換える決心をしました。ディーゼルエンジン搭載車種で選考したところ、当時クリーンディーゼルとして売り出し始めていたマツダ車が候補に挙がりました。妻も運転しますので、CX-5よりも取り回しの良いアクセラを選択しました。「クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金」制度も新車購入の後押しをしてくれました。ディーゼルエンジンの特徴として馬力は出ませんが、太いトルクがあり坂道や高速道路の合流にも安心でき、妻にも好評です。また、軽い車重も相まってトルクウエイトレシオ(33.9kg/kgm)はWRX STI(34.4kg/kgm)やランサーエボリューションⅩ(36.0kg/kgm)と肩を並べるレベルです。救急搬送同乗の帰り道や県外での研究会参加などにも活用しており、ホームタンクからの消費に貢献しております。無駄なく資源を使いつくすことができ、自前の廃油リサイクルシステムにも満足しております。
  現在、環境労働省が廃熱・湧水等の未利用資源の効率的活用による低炭素社会システム整備促進事業を進めています。これまで透析のために使用した透析液は排水処理装置からそのまま廃棄していましたが、透析熱回収ヒートポンプを活用することによりエネルギーコスト削減を図ることができるシステムが開発されました。透析のために使用する水は水道水を利用しています。約35度までヒーターで加温して使用していますが、冬期間になると原水温度が3度以下になることもしばしばです。また、透析廃液も35度前後で排出され、これまでは自然と外気温に収束していました。この廃液の熱エネルギーを原水の加温に利用することにより、加温のためのエネルギーの約7割を削減できると試算されます。先日、「2019年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」の募集が開始されました。実現出来れば、『患者さまに優しい地域診療所』から『環境・地球にも優しい透析診療所』として飛躍できるかもしれません。ただ、目下の懸念事項は、ホイールローダー購入後の自身の中性脂肪値と体重の増加です。
  次の執筆は、父が秋田赤十字病院に勤務中に体調を崩し、当時大学院生の私が助勤に出向いた際にご指導いただきました富樫 賢先生にお願いいたしました。現在は活動の場を大学病院からフォンテ秋田内「あきた腎・膠原病・リウマチクリニック」に移され、ますます活躍されておられます。
 
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