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<ペンリレー>

発行日2016/06/10
いなみ小児科ファミリークリニック  稲見 育大
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「あなたは我慢できますか?-マシュマロテスト-」
 
  みなさんはマシュマロテストというテストをご存知ですか?4歳の子供の前にマシュマロ(大好きなお菓子)を置いて、「今食べてもいいけど、15分待てたらもう一つあげるよ。」と伝えて反応を見るテストです。こどもたちの必死に我慢する姿はYoutubeで「mashmarrow test」と検索すると見ることができます。食べたいのに必死でこらえる姿はとっても可愛いですよ。
  その結果ですが約4人に1人が我慢することができたそうです。多いと思われますか、少ないと思われますか?少なくとも自分が4歳の時にこのテストに成功できたとは思えません。さて、このテストはこれで終わりではありません。ウォルターミシェル(心理学者)がこのテストを最初に行ったのは1960年で、その後もこども達をフォローしました。そして、我慢できたこどもはできなかったこどもよりアメリカのSAT(大学進学適正試験)の平均点が高く、成人してからも高収入となったことを明らかにしました。このことからウォルター氏は「自制心が人生の成功を左右する」と考えて、どのようにすれば自制心が育つのかを研究してきたそうです。その内容を一般書としてまとめたのが「マシュマロ・テスト 成功する子・しない子」です。今日はこの本の内容についてもう少しご紹介します。
  ウォルター氏は自制心に関する脳内の葛藤を大脳辺縁系vs大脳皮質(特に前頭葉)であると考えています。大脳辺縁系はああだこうだと考えずに即決する脳です。栄養になるものがあったら食べる、危険な動物に遭遇したら逃げる。あれこれと考えていたら大切な食べ物は奪われ、危険な動物に食べられてしまいます。つまり動物として生き残るには必要最低限かつ重要な反応です。しかし即決が大切なのでその行動の結果がどうなるかなど考えません。一方で大脳皮質では先々まで結果を見通して行動を決定します。その上で大脳辺縁系の欲求を抑えてより有意義な行動を選択しようとします。これが「自制心」ということになるのです。言われてみるとそのとおりな感じがしませんか?一言で言えば「欲求対理性」の構図ですね。
  「では自制心をより働かせるにはどうすれば良いか」ということについてのヒントもいくつか示されています。

1、「見ない」作戦 マシュマロテストで我慢ができたこども達はどのようにこの衝動を乗り越えたか?それはマシュマロを見ないようにしていたそうです。少し話はそれますが、電化製品が好きな私は東京に住んでいた頃頻繁にビックカメラに通っていました。そこに行けば魅力的な商品にあふれ、あれもこれも欲しくなっていました。しかし、今はビックカメラに行くこともなくなったせいだと思われますが、電化製品をそれほど欲しいと感じることもありません。意図的な行動ではありませんが結果として「見ない」作戦が私の衝動買いを抑えているのでしょう。

2、「IF THEN」作戦  「もしも〇〇したら、◇◇する。」と決めておけば良い。これもまた非常に単純ですが大脳辺縁系の誘惑の隙を与えない方法ですね。

3、「壁に止まっているハエの視点」作戦 自分を客観的に見る方法だそうです。自分の行動を壁に止まっているハエの視点で考えるとより冷静に判断ができるということのようです。これはかなり高度な気がしますが理屈はわかりますね。

  この本を読んで私の行動は大きく変化しまた!と書きたいところですが、そうはいきません。人間とはきっとそういう生き物なのです。これからも少しづつ頑張りたいと思います!
  それから最後にもうひとつとてもおもしろいことが書いてありました。
  「根拠のない自信」作戦 物事を冷静に判断するときに気持ちの持ちようはとても大切。その一つとして根拠がなくても自信をもつことで常に前向きになれる。根拠がなくていいの?と思うかもしれないのですがいいそうです!様々な研究で人間は根拠のない自信で精神的なストレスを回避しているそうです。私は物事に自信を持てずチャレンジできない性格なのですが、なにか背中を押された気がします!でもやっぱり勘違いだったらみなさん是非教えてください!
  次回は市立病院小児科の小泉ひろみ先生です。よろしくお願い致します。
 
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