午前中の手術が終わってホッとしたところ、スタッフからトイレが詰まっていると報告がありました。急いで見に行き、便座の蓋を上げようとしたら、彼女がちょっと焦った顔で「先生!やめてください!」と、ちょっと控えめに叫んでしまいました。意味が分からないわけでもないのですが、便座の蓋をそっと開けてみたら・・・きれいでした。行くべきものは全部行きました。便器の中の水たまりがいつもよりちょっと少な目ですが、何ともありませんでした。あれ?どこに問題があったというのか?今度、彼女がタンクの重い蓋を下ろしてくれて、「先生、中を見てください!」と言いました。中を覗いてみたら、タンクの貯水がほぼ空っぽなのに、給水が全然されていませんでした。浮玉の上方にあるところから水が勢いよく漏れていました。いくら浮玉を上下に動かしてもタンクの給水ができませんでした。あぁ、なんとなくわかりました。トイレが詰まっているというより、貯水が足りなかったため、『もの』を流せなかったんですね。
説明書もなく、何もできませんでした。昔のタンクの構造がずっと単純でしたが、時代が変わり、原理は同じでも、タンク内の構造が複雑になったのですね。トイレのドアに「使用禁止」の張り紙を貼ってもらいました。午後の手術が無事に終わって、給水タンクをどう直すのか、悩みながらあれこれと考えていました。しばらくして、漫画で言えば、吹き出しに1個の電球が煌々と点いている感じで、突然思い出した。YouTubeだ!YouTubeで調べればなんとかなるかもしれません!
なぜYouTubeかというと、いつからかは覚えていませんが、手術日で泊まりの夜はよくYouTubeを見て時間を過ごしています。YouTubeでアフリカのライオンやバッファロー、マングース、ワニ、小さいけど勇敢なhoney badgerなどを見て、自分もサバンナにいたような気がしてしまいました。また、太陽に突入したという想像を絶するほどの巨大UFOも見てしまいました(これはかなり胡散臭いので、笑うしかありません。)。たまには眼瞼手術や白内障手術の動画も見ていました。そう言えば、成熟白内障の水晶体前嚢にトリパンブルーで染色後、針でこの前嚢をちょこっと刺すだけで、前嚢が収拾つかないくらいの勢いで裂けてしまった状態を「Argentinian flag」signというのも、YouTubeで初めて知りました。なるほど、うまい命名ですね。青―白―青の三色ですからね。また、バッテリーの上がっている我がクリニックの車をジャンピングスタートで救援できたのも、繰り返してYouTubeの動画で手順を確認してからやりました。
本題に戻ります。「トイレ タンク」でYouTubeを検索したら、なんと1発で我がクリニックの問題のタンクとそっくりなものが目に飛び込んできました。動画の内容も分かりやすく、全く同じ症状なので、これはラッキー!だと喜んでました。交換する部品の番号を控え、即アマゾンで調べ、注文しました。送料込みで963円でした。ちなみに、便器メーカーのT社に確認したら、出張修理は最低5,000円はかかるそうです。5,000円を浮かすため、どのくらい電気を節約しなければならないのか、ついつい考えてしまいました。数日後、メール便で部品が届き、動画の通りに老朽化した部品を新しい部品と交換したら、我がトイレタンクが見事に復活いたしました。YouTube万歳!
次回のペンリレーの執筆者は「御野場たなかレディースクリニック」の田中秀則先生にお願いいたします。
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