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<ペンリレー>

発行日2009/02/10
中通総合病院  東海林琢男
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断食療法
 
 私は医師でなく患者としての経験から、断食療法が一部の病気には効果があると思っています。その経験を書きます。
 高校一年の夏、なんとなく体がだるいので近医を受診、蛋白尿を指摘された。総合病院の腎臓内科に入院、腎生検などが行われた。退院約2ヶ月後に腎生検の結果が知らされた。医師から「重要な部が十分に採取されていなかったので腎生検による診断はできなかったが、慢性腎炎としてフォローアップしてゆく。治療法はないが、過労や激しい運動を避けるように。予後は、この状態が続くかもしれないし、徐々に悪くなるかもしれない。徐々に良くなる可能性もある。」と説明された。なんとなく気が滅入って、駅から自宅とは逆方向の電車に乗り、思いついた所で下車して街を歩き、書店で立ち読みをした。健康書コーナーに「断食で万病が治る」という主旨の本があった。著者はヨガの指導者だった。病院に通っても治療法がないのだから断食療法を試すと決めて、その本を購入した。尿蛋白の試験紙を購入して、治療効果のマーカーとすることにした。冬休みが14日間なので、絶食期を14日間と決めた。本に書いてある通り、絶食前の減食期を絶食期の半分の7日間とし、絶食後の復食期を絶食期と同じ14日間と決めた。親は当初反対したが、「やってみて駄目ならやめる。」と言って説得した。親が減食期、復食期の、重湯、三分粥、五分粥、七分粥などを作ってくれた。
 断食療法を実行した。本に「絶食期の初めの数日間は空腹感を感じるが、その後はあまり気にならなくなる。」旨が記されていたが、その通りであった。また本に「絶食期間中は病気の症状が顕在化する。」旨が記されていた。症状ではないが、私の尿蛋白の推移はそれを反映するものであった。減食期には1+であったが、絶食期間中に2+になった。復食期に1+となり、復食期が終わる頃に±から-になった。断食療法は効果があると感じた。その後2ヶ月間は-か±であった。かぜをひいて一時的に+になったので、念のため春休み前後に絶食期7日間の断食を行った。以後27年間、発熱中や運動後以外で尿蛋白が出たことはない。
 この経験から、高校生だった私は、「治らないとされている病気を少しでも治る病気にすることが重要。」と思い、医学研究者になりたいと思った。新設県立高に入る程度の学力しかなかったので、高校卒業後医学部に入るまで6年を要した。医学部に入り、医学研究の道を探った。基礎の先生から、「基礎医学の研究者は35歳までにある程度の結果を出して、40歳位で教授選に応募するのが普通。教授になれなければ、それまでの研究とは別の世界で生きてゆかなければならない。」と言われた。医学部卒業時点で30歳の私には基礎医学の研究者は無理だと思った。病理学ならば、positionに応じてそれなりの研究を続けることができそうなので病理学を選択した。現在は市中病院に勤務し、病態解明や治療法確立のヒントがないかを考えながら病理診断を行っています。
 
 ペンリレー <断食療法> から