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<ペンリレー>

発行日2008/08/10
新田医院  新田 格
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電話の恐怖
 
 ペンリレーの依頼にちょっと拒否してみたものの、断りきれず引き受けてしまいました。文章が大変苦手で披露するような趣味もないので、最近の仕事の話を書きたいと思います。平成19年11月父の医院を継承してもうすぐ1年が経過しようとしております。日々の業務で一番のストレスと言えば、緊急の往診依頼の電話でしょうか。今まで行ったことのない患者さんの家まで住所をたよりに向かうのはなかなか難しく、携帯電話を片手にうろうろすることも多くあります。なんとか患者さんの家についてもそれからが大変です。毎回自分の未熟さを痛感させられております。特に印象に残っているのは次の2つでしょうか。
 ひとつ目は初めての往診でした。朝、7時頃医院の鍵を開けて中に入るとすぐに電話が鳴る。出てみると電話の相手は興奮して何を話しているか分からない。どうやら往診の依頼のようだ。何とか住所を聞き出し患者さんの家に向かう。とりあえず住所を頼りに向ってみる。幸い家族が大通りまで出てくれていた。家に入ると、居間の奥の部屋で布団の上でおばあちゃんが座ってぜ~~ぜ~~と音をたてて呼吸をしている。顔面蒼白で著明な発汗。聴診器をあてると明らかな心雑音。聞けば数日前から発熱があったらしい。SATモニターも測定不能。心不全?肺炎?などと考えながらも入院が必要と考え救急車を家族に呼んでもらう。救急隊到着して一安心。しかしよく考えると救急車を呼んだだけ?
 ふたつ目は、夕方診察終了しスタッフが帰った直後に電話が鳴りました。胸が苦しいとの訴えあり動けないと。患者さんの家に到着し脈をとると一分間120前後でやや不整。聴診ではもう少し脈が速そう。以前狭心症は否定されており、脈も正常の患者さん。頻脈による胸痛だろうと考える。以前動悸時に処方していた薬を内服させ、20分程度経過観察。症状の改善あり脈も不整ながら100前後に落ち着き、胸部症状も改善。明日受診するように話し往診終了。と思ったら1時間程して再び電話があり、胸痛が再度出現したとのこと。そのまま2回目の往診。状態は先ほど来た時と同じで、症状も強く患者さんは高齢なこともあり動けない。心電図なしで点滴は・・・と考え救急搬送要請する。救急隊到着し、モニター装着してビックリ!心室頻拍でした。まさかと思い冷や汗がだらだらでした。
 他にもたった数ヶ月間で考えさせられる症例が数件あり、以前は検査、スタッフなど、充実した医療環境で診療していたかを感じ、同時に道具がない時の診断の難しさ自分の余裕の無さを痛感しました。今後できればもう少し余裕を持って往診に行けるようになりたいと思っております。
 短い文章でもうしわけありませんでした。
 次回は秋田組合総合病院、糖尿病代謝科の下斗米先生にお願いしました。宜しくお願いいたします。
 
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