50歳、大学医学部卒業後25年、最近、大学時代の同僚からの依頼などで超音波の講義を地方都市ですることが多くなりました。移動手段はむろん飛行機です。飛行機は羽田、伊丹、名古屋中部、千歳空港での乗り次ぎを利用すれば、秋田から沖縄を除けば60分程の搭乗時間に違いがあるだけで全国のどこにでも連れて行ってくれます。私が最初に飛行機に搭乗したのは小学校6年の時でした。新屋にあった旧秋田空港から羽田空港までYS-11型機での飛行です。非常に天候の悪い日で、飛行機は上下に揺れ、怖さや吐き気で二度と乗りたくないと思ったものです。その時のトラウマは学生時代も続き、どこに行くにも列車の利用(昔、飛行機は非常に高価な乗り物で常に金欠病の私には乗れなかったことも一因ですが)でした。西医体で長崎に行く時も、富山から大阪にでてから寝台列車を利用した記憶があります。電車の旅はそれなりに面白いのですが、時間がかかる欠点があります。そのため、飛行機好きにならなければならなかったのです。 飛行機を移動手段と考えた時には、空を飛ぶ安全性や飛行場までの時間、手段などが問題となりますが、孤独性を保てるリラクゼーションルームは仕事場とみれば快適そのものです。電車と違い周囲から邪魔されることが少ない環境です。 機種、機内での座席の位置で目的はかわります。しかし、共通するのは可能な限り、騒音の少ない大きい機種を選びます。 仕事や生活に疲れていてゆっくり休みたい時には、窓側の座席を選びます。機内は上空に行くと気圧が低下しますので自然と眠くなります。意識して全身の力を抜き、外の風景を眺めながらボーとしていると、いつの間にか熟睡をしています。よく寝たなと起きても30分程しか経過しておらず、熟眠感が得られます。正に、機内の気圧低下のおかげです(降下時の耳閉塞感はイヤですが)。また、起床したのちには外を眺めています。曇りの日には本当に雲の絨毯の上を飛行機がゆっくりと進んでいきます。時速800km以上とは思えないほどゆったりと進行しています。雲の形も刻々と変化し趣があるものです。晴れの日には地図模型のように下界がみえます。高度が低下すると一軒一軒の家がマッチ箱のようにみえ、あの大阪城でさえ小さい感じがします。その中で一生懸命働いている人がおり、一人ひとりが頑張って生活していると考えると、何となく自分は小さいような感じがします。ゆっくりと焦らずに細かいことに気疲れせずに生活しようと、何か卓越した感じが出現します。患者さんに、体重を減らしなさい、タバコをやめなさい、ストレスを抜くようにしなさいなどといつも口にしていますが、患者さんには患者さんの生活があるのだと感じてしまいます。飛行機を降りると医師の頭にもどり、翌日から再び同じ生活指導をはじめますが、一瞬でもこの卓越した感じを味わうことができるのが飛行機の利点です。結構ストレス解消となります。 一方、仕事をしようと考えた時には前方座席の通路側を予約します。前方座席には仕事しているビジネスマンが多く、仕事していても目立たないことと、窓側よりも開放感があるからです。さらに、客室乗務員にコーヒーのお代わりをする際やトイレに行く時にも便利です。私の印象ですが前方座席の方が客室乗務員の目も届きやすく優秀な方も多いようです。しかし、注意しなければいけないことが一つあります。脳をフルに使用する仕事は上空では気圧が低く酸素が低下していますので向きません。むしろ、いつも面倒と思う書類の整理や単純な作業には向いています。また、仕事と全く関係ない本を漠然と読むのも面白いと思います。おかげで、プレジデントなどの経済雑誌、ワーキングプアなどの社会問題を扱う単行本、推理小説などの本を昨年は読ませていただきました。 最後に、接遇という面では客室乗務員の方は最高の部類に属していると思います。優秀な人とダメな人、気の利く人と利かない人の差は非常にありますが、何が違うかを少し酸素が低下した頭で観察しても面白いと思います。 今回、非常にお世話になっています市立病院小関先生からのペンリレーでしたが退屈な文章で申し訳ありませんでした。次回は秋田組合病院から昨年開業されました循環器内科、新田先生にリレーします。
|