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<ペンリレー>

発行日2006/01/10
中通総合病院  赤羽仁三
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我が家の咲かない金木犀を見て思ったこと
 
 木犀は、中国南部の原産の植物で、江戸初期に日本に伝わったとされている。
金木犀は濃厚な芳香が多くの人たちに好まれて、関東以西の人にはなつかしい名前である。
 夏の終わりから秋にかけて、やや涼しくなってまだ夏のほとぼりの残る頃、遊び疲れての帰り道暮れかけたうす闇の中のどこからともなく匂って来た金木犀の香りは、私のふるさとの原風景である。
 今年、秋田の秋は温暖化現象の影響か暖かい日が長く続いた。勤務の帰途に金星が南東の夜空に輝く頃になってもまだぬるい空気が感じられるほどだった。そんな時ふと金木犀の芳香がただよってくるのに気づいたことがあった。秋田でも元気で育っているのだなと思った。
 我が家は築30年以上になり48年豪雪もしのいできたが、ささやかな庭がある。転居後まもなく1本の金木犀の苗を植えた。その後なんということもなく忘れていたが、20年ほど経って気がついてみると花も咲かなければ、木も大きくなっておらず、植えたときのままで、もちろんあの花の特有の香の気配もなかった。それで少し日当たりのよいところに移植をしてみたがやはり花は咲かず、2本目を植えてみたが同じであった。
 先日盛岡で地元の新聞の投書欄に岩手県ではなつかしい金木犀が育たないという嘆きを述べる文が載っているのを読んだ。なるほど秋田も同じ東北で育ちにくい事情があるのだなと思った。その後気をつけてみていてある家の庭に高さ3mはあろうという木を見つけたが、これはどうも移植したもののように思われた。
 そういえば我が家の庭では、沈丁花を2回植えたがうまく冬を越せずに消滅した。山茶花は植えて数年間の樹木の小さいうちは、秋にたくさんつけたつぼみがまもなく降る雪に花開くことなくしぼんでしまっていた。それが30年経った今は、樹囲が30cm近くなってつぼみは春まで持ちこたえ、雪の中でもたくさんの花を咲かせるようになった。
 春になると我が庭には、福寿草やわすれな草が早々に咲くが、ついで雑草がはびこる前にチューリップが一面に咲き出す。これは秋に掘り残したり、小粒の球根をあちこちに埋めたものが一斉に芽を出すので、我が庭ではチューリップは非常に強い草ということになっている。しかし発育の良し悪しはどうも手入れの善し悪しの問題であるだろうと思って来ている。
 昨年11月に同級生の五味夫妻とニュージーランドを旅行した。ちょうど初夏の花盛りで、南島は全島がエニシダの黄色い花で染まっていた。道ばたや河原は色とりどりのルピナス(昇り藤)で埋まっていた。旅行者の我々にはすばらしい風景だったが、地元ではこれらの花は150年前にスコットランドから持ち込まれた外来種で、牧草を枯らし、原生林に食い込んで他の植物を枯らす駆除と憎悪の対象になっていると聞いてびっくりした。それにしても植物の本性と、気候と土壌とが非常に強く適合していると思われる、見るからに圧倒的な状景であった。
 秋田のわらびは、岩手のものに比べて、はるかに旨いと最近教えられた。秋田に移り住んでみて秋田の違うところは冬の雲の低さだけと思っていたが、狭い日本でも土地柄の違いがあり秋田の本当の風物や事情を知るのに大分鈍感であったなと思うも多くなった。暇になった時間をこの辺のことに使いたいと思っている。
 リレーはいつもお世話こなっている小児療育センターの遠藤博之先生にお願いしました。
 
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